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【食文の文】





最近すれ違いが増えた



六年に進級すると同時に委員長に任命され、圧倒的に仕事が増えた。


自身の仕事にだけ集中していればよかった今までとは異なり、委員会の後輩の面倒を見てやらなくてはいけなくなった。

後輩のできない仕事は自分がやり、後輩ができる仕事も最後のチェックは自分がしなくてはいけない。先生から突発的な仕事を任せられるときもある。

ただでさえ最高学年になって授業内容も複雑になり、予習復習自主練に多くの時間を取られるというのに…


今日も夜はかなり更けた頃だが、未だ自分は用具倉庫に一人でいる。
先程までは後輩もいたが、あまり幼い後輩を遅くまで仕事させるわけにはいかない。さっさと後輩を自室に帰し、残った仕事を片付けている最中だ。


大体の仕事のめどがつき、うんっ、とひとつ伸びをする。コキコキ凝り固まった首を回しながら、ふと最近文次郎と会ってないな、と思い出す。


もちろん、合同授業で顔を合わせたりはしているのだが、恋人としての時間は一切過ごしていない。


ふう、と一つため息をつき、作業を止める。


まあ、忙しいのはいたしかたないし、自分の仕事や授業、さらには将来の進路のことを考えると、今まで通りのように一緒の時間を過ごすのは難しいことはわかる。

ましてや、文次郎は真面目で成績も優秀、自分より遥かに難易度の高い城への就職を目標としているため、少しの時間も勉学、トレーニングに打ち込んでいることも知っている。

あいつのためにも無理は言いたくないが…



「会いたいな…」


少しでも話しをしたい、少しでも声を聞きたい、少しでも触れたい、少しでも一緒にいたい…

体の全てで文次郎を求めている



お前はどうなんだ、文次郎?







バンッ!


大きな音を立てて用具倉庫の扉が勢いよく開く。


びっくりしてふりむくと、そこには今思っていた相手…文次郎が立っていた。



「…とめ…」
「文次郎…!?」



驚きながら、でも嬉しくて、なんでいるのかわからなくて、とにかく頭の中がパニックになる。


慌ててる俺の様子を気に留める様子もなく、用具倉庫に入ってくる。


ゆっくりと俺に近づいてくるが、その様子が少しおかしい。


背は曲がり、腕は力無くだらんとさがり、足元はフラフラ、目はうつろで口も半開きと、死霊という表現が一番あうだろうか。


「も、文次郎?」


俺の声掛けにいっさい答えず、俺の目の前まできたかと思うと、ドサッと俺に倒れ込む。

「なっ?」
「つかれた…」

抱き留めた俺の首筋に顔を埋めながら、蚊のなくような声で呟く。


顔をみると、目はほとんど開いてなく、目元の隈はいつも以上に深く刻まれている。
また何日も寝ていないのだろう。


「大丈夫か?」
「ん〜…」


あまり大丈夫じゃなさそうだ。

こいつ、なんでこんな状況でここに来たんだ?いや、うれしいんだけどさ。



温かくなって来た陽気とはいえ、夜の用具倉庫は幾分冷える。

こんなところで寝て風邪を引いてしまっても馬鹿らしい。


「おい、文次郎、寝るなら部屋に戻れ」
「んん〜」

返事はするが一行に離れる気配がない。

「おいっ!文次郎!」

ぐいと文次郎の肩を掴み引きはがそうとすると(勿体ないが)、あろうことか文次郎は俺の背中に腕を回し、力いっぱいしがみついて、尚且つ駄々をこねるように首を振る。


「も、もんじろ!?」

今まで見たこともないような文次郎の態度に慌てる。
あまりの可愛さに卒倒しそうだったが、文次郎の体調をやはり優先すべきだ。ってか、このままだと俺の理性ももたないし。

「もう少し頑張れ、部屋の布団で寝ないと風邪ひくぞ?」
「…」
「文次郎?」
「ゃ…だ…」
「は?」
「へやより…ここのほうが…おちつく…」

舌の回らない口調で、たどたどしく言う。


なんて嬉しいこと言ってくれるんだ。


込み上げてくる愛おしさに口元が緩む。





仕方ないな。


片手で文次郎の腰を抱き、もう片方で頭を優しく撫でる。

すると、事切れたかのように意識を手放し、規則的な呼吸をしはじめた。


気持ち良さそうな表情の文次郎の額に優しく接吻をする。


「おやすみ、文次郎…」


FIN





またよくわからない文章ですみません。
日本語って難しいいいい!


文次郎は眠いときと酒飲んだときはデレ全開になってほしい。
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