「出来れば、あの子には私の過去に触れて欲しくなかった」
竜宮城で斬りまくったゾロを不安そうに見るあいつを見てナミは言った。
「いつかは通る道だぜ?お前は強くなったんだろ?心も」
三角座りしてウソップは言う。
「ヨホホホホ!大丈夫ですよ!」
明るい声でブルックも続ける。
「無理な話ね、ナミ」
「っ、いつの間に…」
ネプチューンと言い争うゾロ。船長がしらほし姫を誘拐したと疑われている今、下手に口を出さない方が正解だろうとこちらの様子を窺いに来た。
「だよなっ、もう引き下がれる気もねぇし」
二年という月日で遥かに超えた予想が
現実が
十字架に刻まれる。
―――今も。
「それにしても船長、どうしたんだろう…」
「ルフィさん…」
ブルックとルフィの心配をする貴女を見ていると暗くなってる場合じゃないわ、と唇を引き締めた。
いつかは対面する時が来る―――
**********
『ナミ、十字架はね、持つんじゃなくて心に刻むものなんだって』
『刻む…?』
皆と二年振りの再会を果たした時、
二年の間の話をした。
私とあの子だけの話―――
『あの日から一年経った日に姉のお墓参りに行ったの』
『そう…』
『シャボンディ諸島に集結する直前にも寄ってきたんだ。』
『…ゾロと?』
何となく そんな予感がした。
少し頬を赤くして
『うん、その後まさか一番にゾロが着くとは思わなかった』
笑って言うから私もつられて笑ってしまった。
この先、どんな行き先でも―――
刻んでいく。
『ルフィ、強くなったね』
サニー号の縁に座って見据える貴女の瞳は強さに満ちていた。
『うん、頼もしくもなったかな』
小さな声で呟いたけど
『ナミも強くなったね』
芯のある言葉で決心がついた。
ベルメールさん
ノジコ
みんな―――
刻んでいくよ、これが私の道だから。
【十字架】
2011.8.4