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【ONE PIECE】お題/ゾロ/オリジナル要素有

ささやかな愛で この日を捧げて。

貴方の愛で 溢れる様に。


伝えて欲しい。こんなにも幸せだって事を―――






少しだけ落ち込みたくなって。
このまま感情に流されるのは自分の為にならないし、そんな時間があるなら修行した方がずっと自分の為になる。





でも どうしようもない時だって あるものだ。



テーブルに突っ伏して30分

眠れずに考えていた。

トン、と置かれたグラスからカランと心地の良い音が出る。


「ほら、アイスティー、飲めよ」

「う…ん」

ゆっくり両腕の暗闇から出した顔は 少し明るさが戻っていた。

両手でグラスを持ち、ストローで飲み出すお前を眺めていた。
俯く顔でも長い睫毛と大きな瞳。 小さな手で 俺を惑わす。

こんな時でさえ 愛しく思う。


―――こんな時だから、こそなのかもしれない。

「ふぅ」

小さくついた息からも様子が窺えるのは



焼き付いて 離れないから。








お前を庇った奴が敵の襲来にやられた。


許せなくて 涙を堪えて 闘ったお前は―



瞳が 死んでいた。



庇った奴は降りた島で意気投合した同い年の少女。

少女は銃を扱う事が出来たが 敵の卑怯な手で
少女は倒れた。


お前は見たこともない怒りを刀に込めた。


冷めたように 冷たい瞳で―――





「はぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



クルー誰もが驚いた。
その心で揺らぐ事なく敵を全滅させたお前は



「ゾっ、ゾロぉ…」


瞳に光が戻った時にはいつものお前で。
俺のシャツを掴んで泣いていた。





それが二日前。



少女は生死の境目のまま治療していたチョッパーの手から島の病院へ移動し
俺達は島を去った。




これ以上迷惑をかけられないとお前が俺達に頼んだから。



ナミとロビンはお前の状況を心配し

「キリナが目を覚ますまでは島の裏に船を隠して待ってみない?」

「私達もこのまま島を去るのは心残りが大きすぎる」


「また同じ事は繰り返しちゃいけないの」

光の戻った大きな瞳は 揺るぎない決心をしていた。

「…お前がそう言うなら、俺は止めねェ」

「ゾロ!」
ナミが思わず声を上げたが

「俺も、お前が決めたんだ。文句も反対もねぇ」

ルフィも助け舟を出してくれた。





これ以上 命の音を減らさないで。

優しく ささやくような 幸せの音。


汚く 醜い心で壊す資格は あんな奴等にあってはならない。




はっ、と思った時にはお前は二本の短刀をテーブルに置いて汚れた刃先を睨んでいた。

「ごめんね、ごめんねっ…」

止まらなくなった涙をどうにかしたくて
汚れてしまった短刀を見せたくなくて
腕を引き寄せ 抱きしめた。


「お前のせいじゃねェ」

そんな悲しい顔をするな

「でも、キリナは…っ」

あいつはお前を守りたくて 庇ったんだ

「あんな奴等に斬られたのは許せねェが、お前を守ってくれたあいつの気持ちを受け取れ」


「!!」


俺の顔を見て止まらなくなった涙を見せた。


「大丈夫だ。お前は短刀に謝ってたじゃねェか。」

「だって、こんなの駄目じゃない…!」


涙を拭う自分の手が どうにかしたくて。


「自分自身を映す短刀にこんな気持ちで人を斬るなんて」



駄目だよ…!



心が泣いている。







刹那 電伝虫が鳴いた。
「はい、はい、そうです」

受けたのはナミ。
姿は見えないが、声で緊張感が伝わった。

「本当ですか?!はい、はい!本人に伝えておきます!本当にご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。キリナにも宜しく伝えて下さい。」


ナミの声で何となく察した俺とお前はお互いを抱きしめたまま顔は甲板の入り口を向いている。



涙がピタ、と止まったお前は嬉し泣きに 変わりそうな―――







『みんなー!キリナが目を覚ましたって!』


ナミは大声で叫んだ


「!」





命の音を聞いたの。


途切れる事なく ずっとずっと―――


離れていても この海と大空で繋がっている。

この命は とめどなく。




ナミの声を聞いた俺達は笑い合った。


この命の音を幸せだと 噛み締めるように。






お題【命の音を聞く】
2011.5.24
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