「あー、貝殻集めて歩くのやめたい。」
「うん、そうだね。」
座っていてもじんわりと汗を書くような暑さ。
夏休みで家に遊びに来てみたはいいが、暇になるたび遊びに来ていると会話もなくなる。
思った言葉をそのまま口にしたら、すんなりと相槌を打たれてしまった。
疑問符が付く言葉を返されることを予想していたのに。
毎日会っていたとしても理解を得られる呟きではなかったはずだ。
暑さのせいもあって、
「適当な返答しないでよ」と言ってしまった。
「適当……?」
ちょっとびっくりした表情をしたあと、考えるように言葉を続けた。
「ひとりで海に行っても貝殻集めるしかないから、一緒に海に行こう。っていうことだと思ったんだけど。違った?」
この人はなんなんだ。まさに、一を聞いて十を知るじゃないか。
言いたいことが当たっていたのがなんとなく悔しい。
「別に、あははうふふな鬼ごっこがしたいわけじゃないからね!」
軽く笑われて「うん。」と言われた。
「そんなことしなくても、この距離はもう変わらないし。」
鬼ごっこをしてるカップルは距離が縮まるのだろうか…。
それは別として、この関係は特別なものなんだと言われた気がした。
なんだか照れくさくて、テーブルにあったサイダーを飲みほした。
炭酸が口の中で弾けて消えていった。
「ねぇ、いつかこの関係が気の抜けたジュースみたいになっても、炭酸を作り出せるかな」
空になったコップには気泡だけが残っている。
「二酸化炭素を吐き出してる限り問題ないと思うよ。」
心配ないとでも言うように笑みを浮かべる。
「そういう意味じゃない。」
生物学での返答を望んでいたわけじゃなかったので、ちょっとむくれる。
「そういう意味だよ。」
楽しそうに笑っている。
「二酸化炭素を吐き出してる限り何度だってやり直せるから。まぁ、こんな味の濃いサイダーなら炭酸がなくても何の問題もないと思うけど。」
「炭酸がなくても美味しく飲める関係ってわけですな」
ふふっと笑うと、
「お互いおかしいからね。」
と笑って言われた。
取り繕った会話をしないのは君だけだ。
「今なら人類のすべてがまともでもいいよ。」
おかしいとされる部類の会話を君とできるんだから。
いつの間にか貝殻を集めなくてもいい夏が訪れていたらしい。
保存メールがいっぱいになったから排出ー
「お互いおかしいから」
って言わせたかっただけ。