彼女は突拍子もない事をいきなりしでかす。
それは今日とて例外ではないのだ。
「奈良、どうかな」
大学のパンフレットをぺらりとめくりながら彼女は言った。
「は?」
「いや、奈良にもあるからさ、いきたい科が」
「ふーん……鹿だね」
「鹿だよ」
「昔、鹿のフンの形してるチョコ喰ったわ」
「マジか。喰いたい」
「マジ。…お前はナマの喰いそうだけど」
「…鹿に乗ってお前を迎えに行くわ」
「全力で拒否る」
彼女は多分京都の大学には受からない。それは彼女も多少分かってる筈だしそうなれば薄っぺらいあたし達の関係の先も察しがつく筈だ、
「京都から奈良近い、よね」
った。
「ん?」
「いや、行き来できるし」
「お?」
「奈良って京都の下らへんでしょ?」
「え?」
「あれ、違う?」
どうやら彼女は大変な勘違いをしているらしい。