話題:今日見た夢




黒髪が綺麗な人を背負っていた。
後ろから華奢な腕が絡み付いて、簡単にはほどけそうにない。

彼女は何かを探しているようだった。
けれども足が無いから探せないと云う彼女に背を貸した。

膝と腰に重みが加わってキシリと軋む。
乾いたアスファルトをブーツの底で削りながら歩みを始めた。

細い曲がりくねった道を、緩やかな下り坂を、時には路地裏を彼女が指す方に従って歩いていく。
暫くすると上り坂に差し掛かった。

この上だと云う彼女の言葉に頷くとダラダラと何処までも伸びる坂を一歩、また一歩と進む。

途中、流石に疲れてしまい立ち止まると背中の彼女が心配そうに『もういい』と云うが、大丈夫だと返すと先へと行く。
そんなやり取りを何度か繰り返した。

坂の終わりが見えた。
広場になっているのか人工物の見当たらない其処は、幾つもの広葉樹が枝を広げていて木陰を作っている。

その内の一本に立て掛けるようにして花束が一つ置いてあった。
瑞々しいそれはつい最近、誰かが置いていったのだろう。

ふと気付くと、膝や背中に感じていた重みが消えていた。
いつの間にか、私の背中に居た彼女は居なくなっている。

きっと探し物が見付かったのだろう。

微かに残る痛みに腰を擦りながら近くにあったベンチに腰を掛けると、彼女に出会う前に買っていたサンドウィッチを齧った。