夜も更けた電車は混んでいました。





30ほどの男性が、ふと立ち上がり、髪の白い女性に席を譲りました。




女性は、ありがとう、と小さく何度も頭を下げて空いた席におさまりました。





そしてその女性は、カバンから何かを探し出して、先ほどの男性の手に握らせてこう言いました。




私、上海からきてる。もう7年も住んでいるが日本語下手。この飴、医者勧める。みんな舐めている。上海からこれだけはいつも送ってもらう。あげる。食べなさい。




男性、少し驚きながらも、言われるがまま包装を解いて飴を口に含む。





車両が次の駅に滑り込む。





男性、なにをおもったか唐突に空いた席に目掛けて走り、座る。



そして先ほどの飴を包装紙に戻して、座席の下に投げ込み、床に唾を吐く。






なんというか。なんというか。なんというか。



目撃したの2週間くらい前なんだけど、とてもとても後味が悪くて、何に向けたどんな感情なのか全然言えないんだけど。なんかすごく舌触りが悪い。ううう。