あれ?この前もこんな感じで誰か捕まって無かった?あ、そうそう、うちのエースが捕まってたわ。めっちゃ余裕そうに見えるかもしれないけど、僕ピンチ。いやぁ、驚いた。いきなり背後から狙われるとは思って無かったから。だって、いきなり、本当いきなり背後から鉄パイプをはい、今から殴るよー。って構えているお兄さんが立ってるわけ。そりゃ驚くでしょう、くそ、エロゲに集中してなきゃ良かった。だっていいところだったんだもん、あと少しで主人公に挿入出来そうだったのにさ、なんて邪魔をしてくれるんだ。本当怒るよ。
頭直撃かと思うじゃん、僕はそこらのちんぴらのようにひゃっほーいしている人間じゃないからそう簡単にはやられねぇぜ。ギリギリでかわして、かわいい女の子の身体見てたのに、ちくしょ。男の顔を見たら、どっかで見たことある顔なんだよね。僕記憶力くそだからさぁ、高校生の時ね、まだこちらの世界へ足を一歩も踏み入れないピュアの僕の成績は下から数えた方が早かった。同じ高校だったボスに、苦笑いつーよりも、ドン引きされるぐらい悲惨だっのさ。だって日本から離れる気一切無かったピュアな僕は英語なんて勉強する必要が無かったもん、まずシャーペンを握りたく無かったし、日本語以外を聞きたくなかったわけ。


本当誰だっけー?思い出せないんだよねぇ。
でも知ってる人だよ、絶対。この裏社会の人間だって。高級感漂わせるスーツきやがって、イケメンか。あ、イケメンだったわ。
黒髪の癖っ毛、やる気なさそうな目。

「あ、思い出した、君梟谷の赤葦でしょう?」

本当イケメンだな、羨ましいぜ。
でも何で梟谷がここにいるんだい?だって君達今海外にいるって言ってたよ、しかも赤葦さん登場とか、映画かよ。あ、違うね、分かってる。物騒だね、鉄パイプ片手に向き合うって、殺る気満々じゃん、僕まだ調子こいた事やってないんだけどなぁ、もしかして捕まえにきた?やだ、この前目付けていた組織に捕まった瑛太君を思い出す。ダサかったなぁ、って言ったら顔面ケーキ食らった。
死ぬかと思ったわ。窒息死だよ、あれ。

僕も捕まっちゃうのかな?うわ、やだ、困る。だって瑛太君が捕まっただけでもボスからのお説教だったんだ、もしここで僕が捕まったらお説教タイムプラス6時間ぐらいなんじゃないの?うわ、死ぬ。

「背中ガラ空きでしたよ」

「いや、一般人をいきなり鉄パイプで殴ろうとしていた奴に言われたくないんですけど、ガラ空きなのは当たり前じゃん」

「一般人ねぇ、鴉原の蒼崎さんが何を仰っているんですか。一般人だったら俺も襲わないです」

顔バレしてるじゃん、僕。
青葉城西でも分からなかったのに、流石梟谷。君達の情報網はすげぇよ、こんな可愛い梓君を瞬時に把握出来ちゃうなんて、今度デートしようぜ、血を流すデートじゃない、健全なデートだよ。
にしてもこれはやばい状況で、今日の僕は何も持ってません、持ってるのはエロゲのソフトだけ、だってOFF、今日唯一のお休みだったの、だから新しいエロゲ欲しくて歩いてたのに、休み返せや。携帯と財布しかねぇや。どうしよう、ここで、はい、戦じゃああ。ってなっても逃げることしかできねぇわ。くそ、俺にインカムくれよ、誰か助けて。ヒーロー。ヒーローいねぇの?鴉原には。

「まぁまぁ、落ち着けって、まず鉄パイプ地面にステイさせよう、僕今日は本当何も持ってないの、君と殺り合おうとも思ってないの、優雅な休みだった訳」

「落ち着いてますよ」

「どこが?鉄パイプ握ってる時点でファンキーボーイだから、バカじゃないの?警察のお世話になりたいの?だからね、ほら、なに?僕に用でもあったの?それともたまたま僕がエロゲで楽しんでいる所を見つけちゃってとりあえず襲っておこうかな?でも思った?」

まじファンキーだな、おい。

「偶然では無いですよ。ちょっと用事があって後をつけさせてもらいました。」

「赤葦さんって何歳?僕敬語苦手だから、年上だろうが年下だろうが敬語使わないで欲しいんだよね」

「22です」

「なーんだ、同級生じゃーん」

用事つうのは多分鴉原の情報かな?生憎僕は情報持ってないんだよね、ボスからもお前は口軽いから必要最低限以外の事しか教えないって言われたし、僕も情報を与えないで。って言っといた。だから無駄無駄。おら、吐けよ。って言われても胃の中のモノしか吐けない、今ならもれなく胃酸付き。朝から何も食べてないからこれからランチでもしようと思っていた所だから
。でもよくこんな真昼間にこんな大通りで鉄パイプ持ってこれたね、通報されねぇの?いや、それとも、赤葦何気高校生に見られてもいい、あ、ちょっとギリギリゾーンだな、だから高校生の悪ふざけなのかな?って思ってスルーなんたろう。

さて、どうしようか。困った。

「先日白鳥沢の情報をハッキングしたよね、その時にね、ちょっとうちの情報もあったの、だからお仕置きしてこいって言われたから来た」

「それ僕関係無いんですけど、やった本人に言ってくれよー。僕がハッキング出来ると思いで?」

「やった人物も分かってるからあえて蒼崎のところに来たんじゃないか」

「まずは僕を捕まえて仲間を誘き出そうとでも?無理無理やめといた方がいいよ、僕一人捕まった所でうちは動かないから」

「でも以前篠久保が捕まった時動いたよね」

「わーすげぇな、そんな情報も知ってるんだ、驚き。でもそう簡単に僕捕まえようとしても無駄だよ、何も持ってないけど、逃げ足だけは速ぇから」

「今日鴉原はOFFらしいね」

だから何で知ってるんだよ。確かにみんなOFFさ。瑛太君と茄智ちゃんはデートしてくるとか言ってどっか行ったし、蒼空君は行きたいライブ行ったし、茶葉と大倉は買い物に行ったし、彰弥君は死んだように眠って起こしたら殺すって言われたぐらい。ボスは何やってるか分からないけどキャバクラにでも行ってるんじゃない?あ、でもボスは年下大好きだからキャバクラのお姉さんのところには行かないか。じゃあどこ?まさか小学校とか?うわ、ドン引き。
つーのは嘘で、鴉原の情報をここまで知っている赤葦さんって凄いのね、僕驚いて何も言えない、言うけど。

「つまりOFFの僕達を梟谷が襲いに来たって事でファイナルアンサー?」

「簡単に言えばそう」

「ふーん。残念だなぁ、うちのバカ共はそう簡単にOFFを満喫しないよ。だって仕事中毒者だもん。OFFを満喫してるのは僕だけ」

「へぇ、つまり働いているってこと?」

「まず、瑛太君、あ、一番のエースね、瑛太君と茄智ちゃんはデートしています、その場所はなんと東京です、そして蒼空君、四番は東京までライブに行くと入ってました、そして茶葉の六番と大倉の七番は東京までわざわざ買い物に行きました。この意味分かるー?赤葦さん頭良さそうだから分かるでしょ?」

「宮城にいるのは蒼崎だけ?」

「さぁ?どうだろう、他は知らないよー。だって一番やべぇ2人の行動なんて知ろうとしたら胃に穴あく」

ふふふと笑うと赤葦さんの表情が固くなる。残念、本当残念、結構前から梟谷が宮城に来ることはわかってたから、だから情報屋といってもいいぐらい情報を持っている蒼空君が今日梟谷が宮城にいるって教えてくれた、だからわざと今日僕達はOFFになったわけ。全部分かってることだから。まぁ、僕はこの唯一のOFFをエロゲを買う為にお外に出たわけ、まさか本当に梟谷がいるとは思わなかったさ、こんな真昼間に。せめて夜襲ってくるのかなぁ?って思ったら真逆でしたね、流石っす。
多分今頃東京組は梟谷のアジトにいるんじゃかいかな?まだ携帯にはメッセージ来てないから突入とはいってないだろうけど。

「ちなみさ、宮城には誰来てるの?木兎さん?木葉さん?」

「木兎さんと俺だけ、他は待機」

「2人で僕達を襲おうと思ってたー?すげぇ、なめられてね?僕達。まぁ、木兎さん腕は全国区でも有名だから2人でも殺れるっちゃー殺れるかぁ、でも鴉原だよ?そう簡単に殺られる器じゃないのは存じてるだろ。だったらもっと仲間を呼んでおかないと」

「強気だね、そうやって強気でいる人間を一番虐めたくなる、泣かせたくなるよね」

「きゃ、ドエス。赤葦さんとは話が合いそうだ。僕もいつも強気でツンツンしている人間を自分の手で弱らせて最後には泣かせで僕の言うこと聞くように調教するのだーいすき」

「話が合いそうだ。今回は俺かな、蒼崎を俺の下で泣かせるのは」

「いやーん、犯されちゃーう。赤葦さんみたいに整った顔を滅茶苦茶にしたい願望強いから負けたくないかなぁ。」

場所変わり路地裏。
紙に書かれた住所に向かう長身で黒髪の男。スーツでは無くラフな格好で辺りを見渡す。確かここら辺だったような気がする、住所と携帯ナビを交互に見る、辺りは味あるお店が多く、常連客が並んでいる。
ひっそり立つ歴史を感じるが綺麗なマンションが目の前に現れる。ここだ。と玄関に入るとセキュリティがかかってて入れない。4桁の数字を入れるとオートロックが解除され、4階まで階段をのぼる。
4階の一番奥の部屋にお目当の人間はいる。

ピンポンを押すか?
いや、待て。と。ドアノブを数回回すと、カチャとドアが開く。オートロックのマンションとはいえ、不用心すぎる。静かにドアを開き、靴を脱ぎ中へ入る。1LDKの部屋の奥のベットに膨らみがある。
布団から出る細い腕、手の中には携帯が握られている、チカチカとランプが点灯している、真っ暗な画面に触れると数十件のメッセージが送られて来ていた。ソファに投げ捨てられたスーツ、テーブルの上には灰皿満タンに煙草の吸殻があった。
綺麗とは言えない部屋の中、足の踏み場はあるが、服があちらこちらに散らばっている、帰っても疲れて掃除する気力が無いのか。

「桐谷さん、起きて下さい」

身体を揺さぶっても応答が無い。生きているのか死んでいるのか分からない程静かな寝息。
頬を軽く叩いても無反応、ため息を吐き、寝ている桐谷の上に覆い被さり、顔を近付け、耳元で起きて下さいと囁く。それでも起きようとしないので、布団を剥ぎ取り、服の中に手を入れていく。冷たい手が触れるたびにビクビクと肩が揺れる。

「起きて下さい、じゃないと、襲っちゃいますよ?」

薄っすらと目を開けると、整った顔が目の前にあった。寝起きが最悪な桐谷は眉間にシワを寄せ、小さく舌打ちをし、布団の近くにあったメガネをかける。

「何で影山がいるの?」

「遊びに来ました」

「いい迷惑なんだけど、今何時?てかなにこのメッセージの件数」

携帯を開きメッセージを確認する。
蒼崎からのメッセージが多数を占めており、梟谷の赤葦が宮城にいると、僕ピンチ、助けて。と書いてある、しかも1時間前に。メッセージで起きれると思ってんのか?こいつ。

「てか、影山邪魔。早く退いて」

「うっす」

影山は桐谷の上から退き、キッチンに向かい、慣れた手つきでお湯を沸かす。桐谷が寝起きにコーヒーを飲むことを知っているかのように。そして桐谷も冷蔵庫の中に影山が好きなぐんぐんヨーグルトが入っている。
お湯が沸き、コーヒーを淹れていると、あ、と思い出したかのように口を開く。

「及川さんに会ったらしいですね」

及川という名前にまた舌打ちをし、会ったと答えると、コーヒーとぐんぐんヨーグルトを持って桐谷の元へ行く。

「勧誘されちゃいました?」

「断った。鴉原以外は興味ないって言ったから」

いまだ起き上がらず、もそもそ手を動かし、煙草を探す。寝たばこは危険ですよ、煙草を机の上に置く。また舌打ちをするが起きようとしない。
及川という名前に、眉間にシワが寄る。

「あの人苦手なタイプだわ」

「あー。桐谷さんには合わないタイプっすね」

「うん、あの笑顔の裏で考えている事がえげつない。てか仲間優先つーのがどうも気に食わない、鴉原も仲間を優先にするけど、城西ほどじゃないし、支障をきたすんだったら仲間を見捨てる事だって出来る。でも城西はそれを許さないでしょう。何があっても仲間を助けろとかそーゆうの無理」

だって信じた所で裏切られる事もある。信頼している人間がいつ裏切るか分からない世界。必要最低限信じてはいけない。影山と桐谷の恩師はそう言い続けた。影山と桐谷は同じ施設で育った。
その施設は幼い子供から10代半ばの子供を人体実験をする施設だった、珍しい瞳の色を持つ2人、施設のトップは2人を気に入り、実験をした。地獄のような施設で育った2人は自分達を守る為に様々の事をした。施設を壊す為にはどうしたらいいか?
タイミングを見計らえ、タイミングをミスったら一生外の空気は吸えないと思え。戦闘能力はそこらの人間よりは遥か上だった。実験をする人間はただの人間、2人に敵う戦闘能力は持ち合わせていない。もしかしたらマフィアと手を組んで襲ってくるかもしれない。2人対何百人だろと関係ない。

この腐った施設を壊すには理由なんて必要ない。
2人は実験室に入る、施錠され、出口は塞がれた状態、今日も身体が悲鳴をあげる実験をされるのか。と思ったが今日は違う。今日はお前らを殺す為にはわざとこの部屋に入った。
隠し持ったナイフでまずは背後にいた人間の首を斬る、ブシャと勢いよく血で汚れる床、素早く鍵を奪い、ポケットにしまう、影山は真正面の男数人を同じく首を斬り、倒れた瞬間心臓にとどめの一撃をさす。桐谷といえば、コンピューター室でパソコンをいじり、職員が多くいる部屋を外部から施錠し、以前設置しといた猛毒ガスを部屋中に撒き散らす。隠しカメラは全部通信オフにした為機能していない。
コンピューター室から出て、影山と一緒に外に出る。2人はひたすら逃げた、ニュースに取り上げられるほどの事件を起こしたのだから。犯人はいまだ逃走中、あやゆる所に警察が立っている。こんな血だらけの人間はすぐに警察に捕まる。

その時に出会ったのが恩師。
恩師は2人を匿って、人間として育ててくれた。しかし恩師は殺された。2人の目の前で。誰に殺されたかは分からないが、声だけ聞いた。あの透き通る声。10年後にこの世界に入るまで忘れなかった声。
その声を以前桐谷は豪華客船の一戦で聞いた、脳内に響く男の声と10年前の声が一致したから。
影山にはまだ言っていない。

言ったら影山は1人でアジトに向かってしまう。それだけは避けたい。

「影山は及川さんと話した事ある?」

「んまぁ、ぼちぼちっすね。なんか気に入られちゃったらしくて、トビオちゃんって呼ばれてます」

「ふーん。どっかで聞いた事ない?あの人の声」

「引っかかってるんすけど、思い出せねぇっす」

そのまま思い出さなくていいよ。
せっかくコーヒーを淹れてくれたので、起き上がり、コーヒーを飲もうとするが、影山が桐谷の腕を握り、そのまま、また覆い被さる。
メガネを外し、首元に顔を埋める。首筋を下から上へ舐める。鳥肌がたったのを見てもう一度舐める。

「ちょっと」

「やりてぇっす」

「はぁ?」

「及川さんに気に入られているのがムカつきます。あんたは俺だけを見てくれればいいのに。及川さんを見ないでください」

「見てねぇし。てか痕残すな、あー。もう。」

「及川さんには渡さねぇ」

首筋に赤い痕を残し、シャツの中に手をいれ、胸の飾りを触れ、少し強めに握る。あ、と桐谷の声が漏れる。唇を重ね、軽いキスから舌が絡み合う深いキス。身体が熱くなってくるのが嫌でも分かる。
やっと唇が離れるとどちらか分からない唾液が2人の口からいとをひく。

「嫉妬?」

クスクス笑う桐谷、そっと影山の首に腕を回す。むっと桐谷を見て、空いているもう一つの手でスボンを脱がせ下着の上から刺激する。

「あんたを抱いていいのは俺だけっす」

「そうだね、お前だけだよ、こんな俺を抱くのは」

太ももに刻まれた0505の数字を撫で回す。そして、下着を脱がし、直接触れる。既に勃ち上がったのを見て今度は影山が笑う。

「暫くやって無かったんで可愛がってあげます」

「程々にしろよ、トビオ」

ちょっと、全シカトですか?うちの組織は?瑛太君と蒼空君はえ?今東京だから助けられないんですけど。ってきた後に明らかに東京満喫してます写真を送ってきやがった。握力60超えだったらこのスマホを粉々にしていたが僕にそんな力は無い。
彰弥君なんかはメッセージさえ見てないでしょうね、無反応、折り返し電話の一本すらない。なにこれ?え?まじで寝てるの 、あいつ。
くそ、赤葦さん足速い、逃げ切れるかな?いや、捕まったら終わりだろ、僕。意地でも逃げないといけない宿命つーやつ?
人気の少ない路地裏に入り、くねくねした道を走る。走るー走るーあーずーにゃん。

鼻歌の気力もねぇ。
とりあえず逃げる、エロゲを抱えて逃げる。

おっと待って、逃げているが、ここ城西の区域じゃねぇかよ、ちくしょ。なんつー場所に入っちまったんだ、僕。アホか。でも城西の人間がいるとは限らない。むしろこの前助けてあげたんだから僕を今助けてほしいぐらいなんですけど。
誰か通らないの?たまたまエロゲ買いに来た人とかさ、ほらほら。

ん?あの髪型知ってる。嘘、お前神様なんじゃねぇの?

「らっきょベッド、らっきょ、らっきょ、お前らっきょだろ、ちょっと助けろ、まじで助けて、助けて下さい、お願いします」

「はぁ、え?鴉原の」

「はぁ?じゃねぇよ、TPOわきまえろや、って違う、空気読んで。今僕追われてるよね、助けてよ、僕もう息切れだよ、ハァハァ通り越してゼェゼェ、あぁ、これ絶対あいつらの副流煙のせいだって、くそ」

「走りながらそこまで喋れるんだったら副流煙の被害少なそうだよね」

「だまらっしゃい、赤葦」

たまたま通った金田一と言ったか?金田一がたまたま持っていた何の意味もない棒を奪い、やっと武器を手に入れた。くるくる回し、うん、悪くないね。
走る足を止めて、赤葦さんを見る、きゃー。あっちも鉄パイプ回しちゃってるよ、殺る気満々?金田一も巻き込んでもいいかな、いいよね、だって金田一だもん。

「金田一君だっけ?死にたく無かったら離れろー。あとこの事は君達のボスには内緒で頼む」

金田一は何も言わずにただ僕たちを見ている。やっべ、殺しちゃダメそうだけど、手抜いたら殺されるわな、これ。だって赤葦さん殺気ブンブン飛ばしてるもん、発情期ですか?この野郎、溜まってるならいいエロゲ貸してあげるよ、僕のオススメ、素人でも簡単、ツンデレ彼女の落としかた、気持ちよくしてデレを見せてあげよう。つーやつ。あれは萌えた。だっていつもツンツンしている彼女がセックスするともっと、そこ、あぁああ。てきな感じで喘ぐから興奮するよね、男だったら誰でも反応するわ。

急所は狙わず、足とかを狙うけど、赤葦さんは急所狙ってくるよねぇ、ほんと加減を知って。

クソ、本気出さないといけない感じ?
しゃーない、何回も言っているような気がするが、まだ死にたく無い。

ギュッと強く棒を握る。気絶させるぐらいだったらいいよね?

「そこまで」

「叔君だ、あれ?叔君なんでスーツ着てるの?今日仕事だった?」

「まぁ、仕事っちゃ仕事。赤葦も鉄パイプ捨てて、木兎さんとは話つけたからもう引けって言ってたよ」

「木兎さんは?」

「見知らぬ土地で迷子になってるんじゃない?そのうち聞こえてくるよ、遠吠えが」

赤葦さんは携帯を出し、ため息を吐きながら多分木兎さんと話しているんだと思う。恐る恐る叔君を見る。だって怒ってたら説教何時間コース?やだよ、でもなーんも僕やってないし。あ、でも殺り合いになっちゃいそうだったから怒ってるのかな?うわ、やだ、こわっ。叔君は金田一の方を見て、ニコリ笑う。その笑みめっは怖いわ、目笑ってないよって助言してやりたい。

「すみません、今日はここで失礼しますね」

一礼してどっか言っちゃった。

「金田一、お宅のボスに言っといて。人の物に手を出すなって」

ブワッと鳥肌たった。金田一もだ。
叔君が怒ってる。まじ怖い。

僕には叔君の言葉の意味が分からなかった。でも人の物って言うから多分鴉原なんだと思う。誰の事だろうか?僕では無いのは確か。だって僕は及川さんにちょっかいを出されていない。むしろ、お互い興味が無いから知ろうとも思わない。
聞いても答えてくれないのは分かってるけどむずむずする。

「どういう意味ですか?」

「過去の記憶を掘り下げてもあんたらには利益なんてねぇから手出すなって言ってるの。人の物に手出すとか悪趣味かよ、ほんとたち悪い。その沸いた脳みそ飛ばす」

「おこですか?叔君げきおこカムチャッカ?」

「カムチャッカだわ、分かった、ぜっっったい伝えといてね、伝えなかったらお前のアジトの壁をらっきょで埋めてやる」

「低レベルー」

「らっきょって、分かりましたよ、伝えときます」

ひょこんと叔君の前に立つと叔君は何か悩んでいた。ちょっと機嫌いいかも。

「ねぇねぇ、及川さんとなにかあったかんじー?」

「いや、なかったかんじー。なんだけど、あの人ちっとやべぇかもしれねぇわ」

「うお、まじか。そんな感じはしていたけど、やっぱ危険なんだ。瑛太君達に伝えとく?」

「いいよ、OFFの日に仕事の電話するのって嫌でしょう。だから帰って来てから作戦会議する」

「え?本当のOFFだったの?梟谷のアジト行ってたんじゃないの?」

「行ってないでしょう、多分。」

やべぇわ、普通に赤葦に嘘ついちゃった。ごめん、だって本当に行ったと思ってたから東京に。
まぁ、いいかぁ、うん。ばれねぇーべ。うん、本当今度土下座して逃走しよう。

「そーや彰弥は?」

「さぁ?音信不通。何回も電話してもただいまー留守にしておりまーす。ご用の方はピーさ。用事でもあった?」

「いや、無いけど。」

叔君はスマホをいじって僕に画像を見せる。あ、さっき僕に送ってきた瑛太君と蒼空君の画像だ、他にも茶葉がスカウトされている所の画像と大倉が巨大パフェをチャレンジする姿。なにこれ?エンジョイしすぎじゃない?いいもん、僕もこれからエロゲするから。
彰弥君だけが、画像こなかったからかな?
ピローン。

両方の携帯が鳴った。おおお、噂をすれば彰弥君だ。しかも画像付き。

あれ?隣で一緒に虫歯ポーズしているのは鳥野の影山じゃない。え?え?え?ん?僕にはよく分からないから叔君見たが叔君も混乱しているみたい。は?え?ん?と僕と同じ事を言っている。
にしてもきわどいな、可愛いと言われてもしゃーないよ、これ。妹の茄智ちゃんに送ったら発狂もんだよ、これ。

「あとで事情聴取」

「ほどほどにね」