エチュード

私のスマホの待受は猫の写真なのですが見るたびに
「もういないんだな」
「もう会えないんだな」
と思います。

写真を見ては涙が出るんだけど、辛いのはこれからなんだ。
今も十分辛いんだけど、これからは喪失感がどんどん増していくんだ。
これがまた辛いんだ。
よくいた場所を見てはいないことを痛感し、お気に入りの布団を見ては、もう2度と眠る姿を見られないことを痛感し、写真を見てもあのふくふくした温かい体を撫でられないことに絶望し、しばらく他の猫すら見るのが辛い時期が続くんだ。

だけどいつかは思い出に微笑める日が来るんだ。
いつになるかは分からないけど、いつかは受け入れられる日が来るんだ。
きっと来るんだ。
残酷なまでに。

小さい猫の話

昨日の夕方、一匹の猫の命の灯が消えました。
1年半前、余命1週間と言われ、それ以来私の母が必死に守ってきた命です。
奇跡的に1週間を生き延び、それから何度も消えそうになりながらも、本猫も母も獣医さんも、みんなで頑張って守ってきました。
最近また弱ってきていて、この夏は乗り切れないかもしれないと覚悟はしていたけれど、想定より早くその日が来てしまい、母はあれからずっと泣いています。
変えた薬が悪かったのか、嫌がるごはんを食べさせたからか、月一回注射していた薬が遅れてしまったからか、今となってはわかりません。

私は彼女の最期に立ち会うことができませんでした。
でも、ただ寝ているだけにしか見えない彼女が、もう動かないと言うことは分かりました。

彼女は私の撫で方をとてもお気に召していたらしく、撫でるともっともっとと延々と要求されました。
でももういくら撫でても、首を伸ばして気持ちよさそうにゴロゴロ喉を鳴らすことはありません。
そばで彼女の話をしていると「私のこと話してるんでしょ?」と言うように、耳だけこちらに向けてピクピク動かすことも、名前を呼べば、最初の一回だけ返事をし、その後は尻尾の先を振って反応することもありません。


ほんの数時間前はいつもの椅子の上で寝ていて、母が呼んだら「私はここよ」と言うように降りて来たそうです。
それが急変し、事切れてしまいました。

どこか狭いところ、暗いところを探すようにふらふらと覚束ない足取りで歩き出したけれど、転んでも起き上がれなくなったそうです。
それを見た母は、抱っこして最近よく過ごしていた物陰に連れて行き、名前を呼びかけ、「ありがとうね、よく頑張ったね」とお気に入りのブラシで撫で続けていたそうです。
名前を呼ぶと、もう声は出なかったけど、尻尾で返事をして、その力がだんだんと弱くなっていき、苦しそうに3回鳴いたのが最期だったそうです。

私は今は家を出てしまったけれど、ずっと一緒に過ごして来た家に遺されるのは本当に辛い。
目に見える全てに思い出がある。
ふとした拍子に、その存在を錯覚してしまう。
そしてもう2度と会えないことを痛感してしまう。
そんなことの繰り返し。

でもこの1年半は、彼女も母も本当に大変でした。
夜中何度も起こされて薬を飲ませたり、ごはんを食べさせたり、心配で眠れなかったり。
残された方の辛さはたまらないのですが、今彼女が苦しみから解放され、のびのび過ごしていると信じています。


今日は私が撮りためていた彼女の写真を見て
「うわあこんな時もあったの?」
「誰これ、別猫みたい!」
「変な顔〜!」
などと笑っては泣いていました。

思うところはいろいろあるけど、涙ばかり出てまとまらない。


ありがとう、9年間本当にありがとう。
我が家に迷い込んできたあの小さなあなたに、どれほど支えられたことでしょう。
その小さい体で最期まで頑張った姿を忘れないよ。
ありがとう。
私がそちらに行った時は、忘れないで迎えにきてね。
もし私を忘れたとしても、母のところには絶対行ってね。
かわいいしーちゃん、また会おうね。

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