坂田銀時誕生日記念☆銀土 『monopolizer』後編

前記事からの続きです。

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十月九日の朝。
新八と神楽が早々に出かけた万事屋に突然やってきた土方を、銀時は驚きながら招き入れた。

「どうしたんだ?こんな朝っぱらから珍しいな」

「まぁちょっとな。それより今日なんか予定入ってんのか?」

「いや、別になんも無いけど。そっちこそ仕事は?」

「休み取ってきた」

「マジで?うちに来てくれたってことは今からずっと一緒に居れんの?」

「ああ」

返事を聞いて喜んだ銀時の表情がほんの一瞬陰ったのを土方は見逃さなかった。
その時銀時の頭にはこの間のことがよぎっていた。

(んなこと言ってもどうせ組から連絡が入ったらすぐ戻るんだろ…)

銀時の思いが手に取るようにわかっていた土方は、その言葉を銀時の口から出させぬよう、自分の携帯を取出して見せた。

「この通り、今から電源を切って明日の朝帰るまでこのままにしておくから。…俺の24時間をお前にやるよ」

「えっ?いや、嬉しいんだけど一体…」

「忘れてんのか、明日は何日だ?」

「あっ…!」

「これは俺からのプレゼントだ。いらねぇんだったら今なら返品可能だけど、どうする?」

「いるいる、いります!誰が返品なんかするかよ!!
…ほんとにお前を独り占めしていいんだな?」

「あぁ、誰にも邪魔させねぇから好きにしろよ」

「んじゃ遠慮なく…」

銀時は土方を抱き寄せるとくちびるを重ねた。


**

すっかり夜も更け、あと少しで日付が変わる頃。

銀時は気になっていた疑問を口にした。

「なぁ、誕生日は明日なのになんで今日だったんだ?」

「明日は子供らが色々用意してるんじゃないのか」

「あー、確かになんかコソコソやってるみてェだな」

「だろ?明日はあいつらと過ごせばいいさ。だから俺は…いや、やっぱいい」

「なんだよ、言い掛けてやめたら気になんだろ」


「教えるつもりなかったんだが…しょうがねぇ、特別に教えてやるよ。
…こうして日付が変わる瞬間を一緒に迎えて、あいつらより、世界中の誰より先にお前が生まれた日を祝いたいって思ったんだよ。
それに…俺だって一日中お前のことを独り占めしてみたかったから…」

告げるつもりのなかった本心を口にし、頬を赤らめている土方を銀時は心の底から愛しいと想った。


―そして、二本の時計の針が天辺で重なった。


「誕生日おめでとう」

「ありがとう。俺、こんなに誕生日が嬉しいと思ったの生まれて初めてだよ。お前のこと好きになってよかった…十四郎」

その言葉に更に赤くなった土方も、本当に嬉しそうな銀時の笑顔に自然と笑みがこぼれた。

銀時はそんな土方をぎゅっと腕の中に閉じ込めた。

「言っとくけど、こんなのは今日だけだからな」

「わかってるって。最高のプレゼントありがとう。
朝まではまだ時間はたっぷりある。お返しに俺を独り占めさせてあげてもいいけど、どうする?」

「じゃあ遠慮なく…」

土方はひとつ歳を重ねた恋人に、今日初めての、昨日からはもう何度目なのかわからないキスをした。


end.


HAPPY BIRTHDAY GINTOKI!
2010.10.10

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間に合わないかと思いましたが何とか出来上がってよかった!出来はともかく…(^_^;

反省点は色々ありますが完成したのが奇跡なんで(笑)どうかお許しを^^

どうしても10時10分に更新したかったのでそれが出来たので満足です(*^^*)

ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!

坂田銀時誕生日記念☆銀土 『monopolizer』前編

「んん……」

銀時と土方の他に誰も居ない室内には二人の息遣いと交わす口づけの音だけが響いている。

久しぶりの逢瀬。

このところ一緒にいる時に真選組から連絡が入り土方が呼び戻されたり、急な仕事で約束自体が反古になるという事が続いていたのだ。

しかし、今夜こそは朝まで…という細やかな二人の願いは、またしても土方の携帯が発する無粋な音に阻まれた。

土方はゆっくりと銀時から離れ、ふぅっと呼吸を整えると隣室のテーブルに置いていた携帯を取り上げた。

「…ああ。…何だと?……そうか、分かったすぐ行く」

部下との通話を終えた土方が、今の会話の内容から察しているだろうが何と切り出そうか…と思案していると、いつの間にか背後にいた銀時に後ろから抱きすくめられた。

「銀…」

銀時は何も言わず土方の首筋に顔を埋めている。

―帰らないでくれ…
―ずっと一緒にいたい…

いつもは心の奥深く押し込めている感情が溢れてしまわぬよう、必死に戦っていた。


そんな銀時に土方は、急いで現場に駆けつけなければ、頭ではそう思っていながら何も出来なかった。

帰ると告げることも、自分の身体に回された腕を振り解くことも

優しい言葉を掛けることも、自分を抱き締めて離さないその手を握ってやることも、
何ひとつ。

永遠にも感じられた時が過ぎ、やがて銀時が顔を上げずに言った。

「…ごめん」

「なんで…お前が謝ることないだろ」


(さぞかし情けねぇ顔してるんだろな…)
顔を見られたくなかった銀時は、土方を戒めていた腕を解くと、くるりと背を向けた。

「戻るんだろ」

「ああ…また連絡するから」

そう言った土方に銀時は俯いたまま軽く右手を上げて応えた。


(すまない…)

銀時の動作に土方は益々何も言えなくなり、発するタイミングを失ってしまった言葉を胸に抱えたまま部屋を後にした。


**

最後に銀時に逢ったあの日から10日以上が過ぎていたが、あの時の銀時の姿が土方の脳裏に焼き付いて離れなかった。

(俺を困らせないよう、自分の感情を押し殺していたんだろう…)
銀時の気持ちを想うと胸が痛んだ。
(何も悪くねぇのに謝るなよ…!)
あんな風に謝らせたままでいる自分が腹立たしくて仕方なかった。

しかし、あれ以来仕事が忙しくなかなか時間が作れなかったのだが、やっと一息つけるようになった。

そこで思い切って丸一日休暇をとった土方は、十日九日の朝、万事屋を訪ねることにした。


約束ひとつ出来ない自分にできる精一杯の贈り物を、愛する人に届けるために――

続く・・・


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**後編に続きます。
よろしければ次の記事にお進みください。

HAPPY BIRTHDAY 銀さん!

改めていうまでもなく、今日10月10日は坂田銀時さんのお誕生日です!\(^O^)/


今日は日本中でこの言葉が飛びかっていると思いますが、私も言わせていただきます!

銀さん、お誕生日おめでと〜!
(^^)/▽☆▽\(^^)



ということで拙いですが銀誕記念の銀土話を書かせていただきました。

次の記事よりアップしますのでよろしければお付き合いくださいm(_ _)m

あっすいません、ちょっと長くなったので、前編と後編に分かれています…

ではではo(^-^)o
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