はい、短いですが作ってみましたっ。予告編みたいな感じで書いてみました。まぁ、続きは…今の所未定で(爆)
「賢者の石って……あの有名な?」
「えぇ、その有名な。万能の石、第五元素とも呼ばれているのは知ってますね?」
怪訝そうに問い質す男に女は軽い説明をしながら話す。
「それ位は知ってますけど……それがどうかしたんですか?」
何故この話をしているのか。全く話の意図が掴めない男は素直に女に尋ねる事にした。
一応、何となくではあるが一つだけ、思いついた可能性の一つが頭の中を過るがそれは流石にあり得ないと思って――――
「……最近、賢者の石と呼ばれる魔道具が大量に出回っているんですよ。それも『その道』の人間だけでなく、普通の人間にも。世界各地に、老若男女問わず。」
いたのだが。
「なっ!?『その道』って、まさか本物だとでも…?」
女は男の質問に答えず、手にした20ページ程度の厚さはあるだろう資料を見ながら話を進める。
「誰でも使えるみたいですよ?錬金術を全く知らない一般人の女性がこの石を使って純金を錬成したという報告もありますしね。ただ……」
「……当然何かを代価にしていると?」
「…はい。この純金を錬成した女性は錬成直後に亡くなっています。その他の大勢の方達も………亡くなるか意識不明で入院しています。既に被害者の数は一万人を越えて今も増え続けています。」
いつもの女にしては珍しく歯切れの悪い様に男はその事件に潜む『闇』を感じ取っていた。
「…持ち主の命を媒体、つまり代価にして力を…そして願いを叶える――そんな所ですか?」
「えぇ…。詳しい調査の結果、この石は言わば受信装置の様な物です。大量に出回った石に指示を出している本体の石がある事も。既にこの本体の石があると思われる場所は判明しています。」
手にした資料を男に手渡した。男はパラパラと捲りながら女に自分のするべき事の確認をする。
「じゃあ俺の任務はその本体の石と石を製造した犯人の確保…ですね?」
「はい、その通りです。特に石は無傷で確保して下さいね?どの様な事態になるか…最悪の事態だけは避けなければなりませんから。」
女の言う最悪の事態を想像する。それだけは――確かに回避しなければならない。
「…了解。じゃあ今から行きますね。」
男は資料を片手に散歩に行くかの様に出ていった。扉が閉ざされてから女は男の身を案じて一人呟いた。
「あっ……もう。…気をつけて下さいよ?」
その声が男に直接届く事は――女にとっては何時もの事なのだが――なかった。