「ちょっと待てちょっと待てちょっと待てーーーーっ!!!」
素早く反転し真後ろへとダッシュ。
結果、爆発をギリギリで避ける事が出来たが体力も精神も限界に近かった。
「シャーリィィィィ………帰ったらキスだけで済むと思うなよーっ!!」
爆煙の晴れた向こう側には炎を纏いし龍、ナナ・テスカトリがいるのにも関わらず捉え様によっては卑猥な事を大声で叫ぶ青年、ヴァン・フレイドは今日――本人曰く『不幸な一日』――の始まりを思い出していた。
◇
「ヴァン、遺跡の調査お願いね♪」
「…………んあ?」
ハンターであるヴァンの朝は早い。
いつもなら早起きするヴァンも前日樹海に現れた迅竜、ナルガクルガとの死闘を制して疲れ果てていた為に今日という一日は『寝て過ごす』事を誓っていた。
しかし、その誓いは残念な事に破られた。
しかもその破った相手が幼馴染みであり、いつもであれば集会所でG級クエストの受付口を担当するシャーリィ・グレイセスである事が一番の問題だった。
「俺さぁ……昨日の狩りでスンゲー疲れてるんだけど?」
「その遺跡がね、ちょうどヴァンが昨日行った樹海の近くなの。いやー、他のハンターじゃちょっときついでしょうけどヴァンなら何の問題もいらないわよね♪」
「………またか。まぁ慣れたけどな」
嫌そうな顔をしながら訴えるヴァンであったが当のシャーリィはヴァンの言葉をスルーして話を続ける。
ヴァンとシャーリィにとってはいつもの事――ヴァンにとっては災難以外の何者でもないが――ではあるのだが。
「そこは地下遺跡になってるみたいでギルドの上位クラスのナイト達で既に探索隊が結成されてたんだけど――」
「……ちょっと待った、ギルドお抱えの連中で探索隊を組んでおきながら何で一介のハンターに話がくるんだよ?」
ハンターは種類が分かれる。
本来ハンターは辺境と呼ばれる地域の村や街を拠点にし、村長やギルドからモンスターの討伐依頼を受けるのが一般のハンターである。
だが、多発する一部の悪意あるハンターの横暴に対してギルドはそういったハンターを取り締まる専属のハンターを指揮系統に加えた。
そのハンター達は『ギルドナイト』と呼ばれ実力は平均のハンターを上回る実力がなければギルドから誘われない。
ギルドナイトが動いたというのに自分に話が来た事に不安を覚えたヴァンの予想は見事に的中する事になる。
「その探索隊、音信不通になって既に三日だそうよ……」
to be continued.