(この子を連れていかないで)
「仔.猫の心臓」(新.居昭乃)BGM。何だか無意識のうちにガイを描いてました。
続きは添付とは関係なく、ルークとガイの話のネタメモ。物凄く出だしの出だしです。好きとか言ったりしているので苦手な方は要注意。
2011-6-15 04:11
ガイ
『好きだ』。そう告げた青年と、それを告げられた青年のお話をしましょう。
まずは主要たる二人の青年についてお話しましょう。『好きだ』と告げた青年の名前はガイ・セシル。そしてガイラルディア・ガラン・ガルディオス。どちらも彼が彼である存在の記号です。短く切った金色の髪と瞳はサファイア。彼の顔は今、瞳の色が溶け出したように真っ青です。
次は『好きだ』と告げられた青年のお話しをします。彼の名前はルーク・フォン・ファブレ。ガイより少し幼いこの青年の名前が存在記号となすには、少し複雑な経緯がありますが、そこはまたいずれ。不揃いな夕焼けのような赤色の髪と、今は大きく見開かれているエメラルドの瞳。薄く口を開け息を吸い込んだその後。
「は?」
人が理解し得ないモノに直面したときにしばしば用いられる、とてもシンプルな言葉が漏れました。
ここは月のない夜空の下に佇むとある宿。雨風を凌ぐために最低限必要な、窓・ベッド・譜業灯、そしてドア。それだけが備え付けられた簡素な宿屋の二階です。二人はそれぞれのベッドの端に腰を掛け、たわいない話の合間の出来事だったものですから、ただ吃驚するばかりです。どうやらそれは発端のガイも同じ様子。
「好きって、俺の事が好きなのか?」
「ぁ、ああ…」
「あれ?ってか今ナタリアの料理の話してなかったっけ?」
「だったな。…でも何でなんだろう。そう思ったし」
好きという文字がルークの頭の中でぐるぐると周り続けます。そもそも好き、という言葉にも想いの乗せ方は様々。笑いながら音機関が好きというガイ。微笑みながら花が好きだというペール。自分に言い聞かせるようにお金が好きだというアニス。そしてルークを好きだと言ったガイ。好きということばはものの好き嫌いから愛情にいたるまで、様々な形で用いられます。
「そう思ってたし、そう思ってるから言ったんだよ。好きだ、ってな」
ガイの表情には音機関を好きだというときの笑顔は見えませんでした。真っ青だった表情は言葉を重ねるごとに揺れを納め、恐ろしく真剣で、どこか苦しくもどかしそうなものだからルークはさらに困惑しました。
ガイの好きが何を意味するのか、ルークにも次第に分かり始めたのです。ナタリアが語り、アニスが夢み、ティアは頬を染めながら聞いていた恋愛というではないかと。ただ何故だかは一向に解りませんでした。
恋愛と呼ばれるものが一般的に異性間で育まれる認識からでしょうか。
(好き。そう思った。思ってた。そう思ってる)
(何時からだろう。どうしてだろう。…何で俺なのかな?)
後退りする思考に段々と俯いてゆく頭をガイはじっと見守ります。口を何とか動かそうと試みるルークでしたが、音にはなりませんでした。生まれてこの方に覚えた言葉が頭の中を濁流の如く流れます。掬い上げる言葉のどれもこれもが違う気がして、今の自分の気持ちを正しく置き換える言葉が見当たらない。そんな悔しさに耐え切れず、
「……ごめん」
小さく絞り出したのは、ある期を境にルークの口から度々零れるようになった言葉でした。