メモ。
とある夜の睡眠妨害。
朱と桃と催眠レインコート。
シトシトとシェリダンの街全体を静な雨の音が包み込む。もうおおよその人は寝静まった時間、さらに人の気配がない夜の街に、その音しかないように響き渡っている。
ルークはベットの上で上半身を起こしたままで窓の外を見つめていた。雨が降っているのに外は青白く見えるのは薄い雨雲から月の明かりが透けているからだろう。
耳染み込んでくるのはシトシトと降る雨の音。宿屋の主は明日の朝には雲は立ち去るだろうと確信があるのかしっかりと言い切った。
この音は明日になれば消える。
静なかこの音が煩い。
瞼を閉じれば先程まで見ていた夢が蘇る。
泥の海に沈む人々の姿。父の名前を呼ぶ子供の声。
忘れたことはないが、夢に出て来たのは久しぶりであった。この静かな雨の音が、黒に飲み込まれる子供の消え逝く声のように思えた。
◇
シトシトとシェリダンの街全体を静な雨の音が包み込む。もうおおよその人は寝静まった時間、さらに人の気配がない夜の街に、その音しかないように響き渡っている。
アニスは布団の中に丸まってその音を感じていた。部屋の中が青白く見えるのは薄い雨雲から月の明かりが透けているからだろう。
耳染み込んでくるのはシトシトと降る雨の音。道具屋の主は明日の朝には雲は立ち去るだろうと確信があるのかしっかりと言い切った。
この音は明日になれば消える。
優しいこの音が煩い。
瞼を閉じれば先程まで見ていた夢が蘇る。
優しく名前を呼んでくれる。この雨の音に似て静で穏やかで包み込むように。
目の前で消えた存在。最期まで騙し続けたのに決して自分を責めてくれなかった優しい緑。