『空中庭園』
だぶるお現代パロ。
どこかのプロットメモ。
双子の兄が怖かった。同じ腹から産まれた存在なのに、兄の事がまったく解らない。双子は以心伝心なんて言ったのは一体どこのどいつだ。(嘘。本当は分かっている。叫んでいるんだ、苦しい、怖いって、叫んでいると知っているんだ) 扉の前にまだ立ち続けているニールの気配が、扉を隔てるライルにも伝わる。扉には鍵がかかっているから容易には入ってくることはできないし、また、扉向こうの気配も無理矢理こじ開ける気は無いのだろう。
「ニール」
思い込みかもしれない、僅かばかりに残るもしもの可能性は捨ててはいなかった。扉の前には誰も、ニールもおらず、ただ虚空に恐怖している愚かな自分でしかないのだと。鍵を開けるその刹那、扉の向こうに声をかけてみた。開けなくて良い理由を求めてみた。(ライルの手は震えながら扉の鍵に手をのばす。扉を開けなければニールは間違いなくそこ居続ける。それは今までから学んだ経験からくる結論だ)
「ライル」
扉を開けるとニールはやはりいた。同じ背丈、同じ目線、同じ肩幅。まるで鏡。いびつに歪んだ鏡。ニールが部屋の中へと足を進めるたび、ライルの足は部屋の奥へと後退する。それはライルが自を袋小路へ追いやる行為であったが、逃げ道を作り出す余裕など今のライルには無いだろう。終止符は、部屋の中に備え付けられたベッドがライルの身体を受け止める形で打たれた。