今日中に間に合うかどうか微妙な所でしたが何とかっ。
「まぁ、君が俺に言った台詞だ……使わせてもらったが問題はあるか?」
「貴様っ……!」
してやったり、そんな皮肉めいた笑顔をした男にアイリスの怒りは頂点へ達そうとしていたのを堪える。
(……落ち着け、奴の口車に乗せられてはいけない……!)
アイリスは改めて男に正対する。
身長は自分よりも高く1m80前後、黒髪に茶色の瞳で東洋人系の顔つき。奇しくも自分と似たような黒いコート姿だが先の戦闘で魔力を使わずに避けきり、尚且つ未だに余裕がある所を見れば鍛えられているのは間違いない。
無論、自分も本気を出した訳ではない、だが確実に行動不能に出来るだけの攻撃を男は無傷で捌ききっている事からも当然の判断と言える。
「ならば……全力で貴様をこの場所から消滅させるまでだ……!!」
そう言い放つと先程男に向けて放った巨大な火球がアイリスの周囲に8個形成される。
(この男は私よりも強い……本気を出す前に叩かねばこちらがやられる……!)
アイリスは理性よりも本能でそう悟った。何より精霊達がこれほど混乱する相手をアイリスは知らなかった。
だが、アイリスの緊張をよそに降参するかの様に男は両手を空に掲げる。
「待ってくれ、君は錬金術師ではなく精霊術師だろ?……なら俺には君と闘う理由はない。だがここにいるのならその錬金術師の事を何かしら知ってるんじゃないか?出来れば教えて欲しい……。」
「……な、何だと?私は貴様を消滅させようとする敵だ……何故、敵を目の前にしてそんな真似が出来る!」
アイリスは男の言葉に堪えていたのを爆発させて睨み付ける。
今まで凄惨な闘いを繰り広げてきた彼女にとって目の前の男の行動が理解出来ないでいた。
「……普通、精霊達にそれ程好かれている精霊術師に悪い奴はいないだろ?それに君の言う"敵"である俺がいながらあのキメラを助ける事を優先させた……俺にはそれだけで信じるに足る理由になる。」
「なっ……。」
アイリスは男の言葉に拍子抜けして火球を霧散させる。
男の顔は先程の皮肉めいた笑顔ではなく本当に嬉しそうな笑顔をしていた。
その笑顔にアイリスは目を剃らしながら答える。
「……先には行かせない。我がヴィルボルフス家の再興の為に、それを叶えようとする叔父様の為に、何よりも父様と母様の為にも……私はここを退く訳にはいかない……!」