ただ隣に居てくれるだけでよかったのに。戦乱という運命の輪に組み込まれた私たちにはそれすら許されない。

夢に見る。幽州に移住してきたばかりの慎ましい暮らしの中、
住処を失った猫族に分け隔てなく接してくれた趙雲の優しさ。
新しい土地で幸せを見つける猫族。仲間がいて、劉備がいて、趙雲がいて。
それだけのことが今は手の届かない過去。
あの頃に戻れたらどれだけ良かったことだろう。
何も知らずにこれから続く平穏な暮らしを夢見ていたあの頃に。

父や母を恨んでなどいない。
むしろ今は感謝している。

ただ、普通の猫族で、戦いに巻き込まれることなく、年頃の男女として趙雲に出会えていたら未来は変わったのだろうか。

ありもしない未来に縋りつきたくなるほど、この絶望は深いのだ。






〜趙雲ルート8章