クロジ パビリオンの星空

小さなサーカスの一団の複雑な人間模様を描く。
サーカスのスターになる!っていう、、、話ではなく(笑
一団のスター=一番星っていう呼称で呼ばれているんですが、人気と実力がある人が絶対権力を持つっていう縮図みたいな感じでした。
クロジですから、きれいな話だけで終わるわけがないですよねー。
とはいえ開始当初の一番星は団長の娘ミーナ。まだ13歳の子供。
わがままとはいえどこぞのお嬢様みたいな高飛車でもなく、高圧的でもなく、人を蔑んだりしない。
サーカスの天幕の中という閉鎖された空間で、外の世界を知らずに生きる子だから世間知らずではあるけど。



初見のときは、どんどん問題が深みにはまって行ってしまって解決しないだろって思うくらいのどん底のお話。
ねじれてねじれて絡み合ってもう一生ほどけないんじゃないかって。そんなことを思ったりしました。

私は初見からミーナに感情移入をしてしまったので、物語が進むにつれ心が痛くてつらかった(/_;)

サーカスに泥棒が侵入するんだけどそれが主人公マカ。
すぐに見つかって警察に突き出されそうになるところをミーナが止める。
幼いころからずっとこじきのような生活で人のぬくもりを知らないマカと、生まれた時からサーカスの一番星になるべく教育されてきたミーナとその周りの人間の共同生活を描く。

ミーナにはアオという兄がいるんだけどね、二人は兄弟だけど愛し合ってるの。
母親が早くに死んで、父親はサーカスで成功することしか頭にない。
二人はお互いが心のよるべだったんです。

そんな生活に変化が訪れたのがマカの登場と、父親の友人ダンの登場。
ダンは元サーカスの一員で、ミーナたちの母親フタバに失恋していた。
ミーナがフタバにそっくりだから面影重ねていろいろ世話してくれるように。
マカはミーナに拾われたその日からミーナに心を開いて絶対的な信頼を置くようになっていたんです。

唐突に日常が壊れたのはダンがミーナに手を出したから。
アオはもちろん自分の女が他の人に手を出されたら怒りますよね。
そしてミーナを突き放した。

アオに見捨てられたミーナはマカにすがる。

ダンとの関係に驚きつつも経緯を聞いたマカ。
「どうしてそんなことに?」
「なんかかわいそうになったから、抱きしめて頭をなでてあげた」
「そうしてあげればみんな嬉しいんじゃないの?」
そこで初めて歪なことに気付くんです。
ミーナは決して悪気があって言ったわけじゃない。本心から。
マカは、ミーナは”マカ”に同情して救い出そうとしてくれたわけじゃなくて、多分それがマカじゃない誰かだったとしても同じことをして同じようになってたであろうことに気づいてしまった。
自分がミーナにとっての特別じゃなかったことに裏切られたと思ったんですね。
それからマカはミーナを拒絶した。

同時に二人を失ったミーナは絶望して、姿を消しました。


一番星がいなくなったサーカス団はそのまま衰退して7年の時が過ぎます。
変な見世物小屋へと様変わりしてしまった一団は借金まみれでもう潰れる寸前。
ミーナがいなくなってアオもサーカスを出て飲んだくれ。
マカがストリッパー。あとはラーメン屋とか蛇芸とかもうごちゃごちゃだよもう。
返済猶予が半年と期限付きになり、もうサーカス団は終わりだってなったとき。
マカがもう一度サーカスをやろうよと説得。
実はミーナがいなくなってから1人で空中ブランコの練習をしてミーナの代わりにやろうとしてた。
マカの一生懸命な願いが伝わってみんながもう一度やる気を取り戻してまた輝かしいサーカス団に戻る、のですが。

実は実はミーナはいなくなってなんかなかったんです。サーカスの誰も来ない物置の片隅で動物檻に閉じこもっていたんです。
そして、それをマカだけは知っていた。
ミーナにもう一度サーカスの舞台に戻ってきてほしくて7年間説得し続けるものの、生きる意欲を失ったミーナは檻の中で死にたいと言い続けていて。
ミーナが戻ってくるまではマカはサーカスを失くしたくなかったんですね。

ただ、サーカスが復活して自分が一番星になってアオというパートナーを手に入れて人生で一番輝いているマカは。
ミーナがまた出てきたら自分が必死の思いで得た居場所を奪われてしまう。という不安に苛まれ。
ミーナを見捨てました。
檻には外からカギかかかっていてマカしか開けられなかった。
マカはミーナのところに行かなくなった。故に飢え死に寸前になったミーナ。
サーカスの音が聞こえてきてミーナは無意識に声を張り上げてマカの名前を叫びます。
その声はみんなに届き、7年ぶりの再会となった。

衰弱して死にかけのミーナ、マカは責められます。

「本当にただミーナに戻ってきてほしかっただけだった」
「どうして最後に見捨てた」
「アオを好きになったから」

好きな人のパートナーという居場所を得てしまったマカはそれを失うのが怖くなったんですね。

ミーナはミーナで死にたいとは口で言っていても死ぬ勇気もなかったから7年も檻の中にいた。
外に出て行くことも出来ず変わることもできずただ生きるしかばねのような生活で。
誰かに依存して生きてきたミーナは全部を失ってしまうことが終わりだった。
でも全部わかってた。自分が死にたいと言いつつ死ねないこともサーカスの一番星という居場所を取られるのが本当は嫌なことも。

「今あらためて死にたい」

マカはミーナの首に手をかけます。
ぎりぎりと締め付け息が切れてあわやというところでマカは泣きながらやっぱり殺せないと手を放します。

「友達を殺せない」

7年も罪悪感で縛り付けてずっと苦しめてきたマカがミーナのことをまだ友達だと言ってくれることに驚きを隠せない。
生死をかけて得た友達を、今度こそ失いたくないと思ったミーナは。
誰かに依存して生きることをやめて自分の力だけで生きていこうと決意しました。



終り。



ひーーーーー長くなった!そしてなるべく主観が入らないようにしたけど嫌なやつばっかりだぜ!

最初に言ったように私はミーナの肩を持ちながら見ていたので、マカが嫌いだ。
っていうか綺麗に収めたつもりだけど、結果的にミーナは最後一番星も恋人だったアオも全部奪われて今まで暮らしてきたサーカスを出て行くからね。
逆にマカはミーナのものを全部手に入れて幸せに生きて行くからな。
そりゃめでたしめでたしなんて思えないですよ。
アオには最後までミーナを追いかけてほしかったです。
それだけあれば多分まだ救いがあったから。


ここまで言ってなんですがクロジにしては比較的まだちゃんと明るさがある最後でしたよ。
もっと救いようのない話はいくらでもありましたからな。
だからこそ救われて欲しかったのかなぁなんて。
うーん、うーん、ミーナがかわいそうでつらかった。


結果3公演見ました。
3日目、前楽、千秋楽。
前楽が座席が絶妙な席で、キャストが通る通路席。で、ちょうど立ち止まって演技をする位置。
そのせいで物語に入り混み過ぎてしまって終わった後が大変でした(笑)
物販に行ったらキャストさんが売り子してたんですね。
まだ余韻から抜け出せずに涙ながらにパンフ買いに行って大高さんに感想を言おうとするも涙で言葉が出てこずに言えないっていうw
でも気持ちは伝わったからふんわりとありがとうございますってお礼をいただきました。
書いてないけど他2グループの物語も同時に進んでおり、親子の話なんかは終盤一番泣き所だったと思っています。
正直なところけっこう泣きました。

今まで見たクロジの話の中では一番明るくて救いあるお話だったと思います。
ミーナとアオさえなぁ・・・うまく続いてくれたらなぁ・・・(まだ言ってる)