百八日目。いわゆる煩悩の数らしいけど。ぜってーこれ以上あると思う。
昨日は無事出勤させてもらい。かねてより分かってたチョコレートのコーティング作業を。
で。メインイベントは夜の営業終了後の上司の送別会。
前やったのは、製菓部門だけ。今回のはお店全体の合同。
…まぁでも。正体は送別会と見せかけた単なる飲み会だけど。
のーみーかーいー。とは言いつつ。トクメーは酒が飲めない。
チューハイ一本空けたところで終了です。
隣の店長さんがワインのロックを勧めてきてくださったんですけど…。つか。ワインはそのまま飲むもんじゃ…。まぁいいか。
周りはみんなビールだったんですけどねぇ。
…しかたないじゃんか。旨いって思えない味覚なんですから。
代わりに料理をたらふく頂きましたごちそうさまです。
で。バスの終電の時間はとうに逃していたので、たまたま奈良から出向してる家のメンツに出迎えを頼む。
…や。ホントは頼むつもりはなかったんですよ?
しかしながら話がずるずると長引くので、電車の終電の前に家に帰る趣旨を告げると
「え。なに。門限きついの?」
「門限じゃないんですけど…今日はたまたま、奈良から親族が来てまして。」
「呼んじゃいなよ!」
「は?」
「酒も料理もまだあるから一緒に飲もうぜ!」
「あーた。初対面の人間をこのカオスな空間の中に放り込む気ですか。」
で。話の流れのまま召喚要請。周りで歓声が上がるものの。到着までのタイムラグですべてが忘れ去られる。計算済み。
…や。一瞬。迎えに来たぞー、で、中まで入ってきたらどうしようかと思ったんだ。多分大丈夫だろうけど。
もしもうっかり入っちゃったら間違いなく、料理と酒責めにあうから。これも多分大丈夫だろうけど。
何が大丈夫じゃないって、それを見てるトクメーの精神状態?
申し訳ないんだか、突っ込めばいいのか。それとも救出を図るべきか混乱しそうなそんな未来予想図だったので。しかもほぼ確定の。
結果としては彼は中には入ってこず、電話で連絡をいただき。そのままあっさり帰宅。
道中で秘蔵のドラマCDを聞かせてもらいました。深夜に何やってんだろ。
トクメーは酒に弱い。
しかしながら、加減が分かっているので記憶が吹き飛んだり、誰に構わず絡みだしたり泣きだしたりってのはない。
自然と手が止まる安全仕様。幾ら顔が赤かろうと、脳内は正気を保っている。
はずだったんですけど。思い返せばちょっとは酔っていたのかもしんない。
宴が進みまくって、皆さんが順調に三本目のビールに手をつけ出したころです。ちなみにその頃の俺はまだチューハイ一本目に残された約半量に立ち向かってる最中。
料理をつつく手も止まり、嗚呼そろそろデザートださねーとなぁ。とか思い立ち。デザートを用意したときですよ。
多分食えないだろうなぁとは思って、適当に置いといたら。ホールの人と上のレストランキッチンの人が絡んできた。
ホールの人は三十路オーバーのいつもの人。
キッチンの人はその同い年。新年会で酔っぱらって、さらに小汚く山盛りにして炭水化物を渡してきた人。
「ロールケーキ食べる人っ!」
「はい!」
なんて。元気よく言うもんだから。酔ってんなぁとか思いつつ。ロールケーキを切り分けて差し出してやる。
すると。受け取りを拒否される。
「…今頼みませんでした?」
「や、頼んだけど。」
「何故受け取らない。」
「ノリ。」
じゃぁ別の人にやる。ほら食えと後輩に渡して、周辺の人にも配ろうともう一切れ取り分ける。
「ロールケーキ食べる人!」
「ハイ!」
「はいはいどーぞ。」
「それはヤダ。」
…。
試しに後輩に持たせて渡しに行かせた。
「おー! ありがとー!」
「いえいえ…。」
ふむ。なるほど。
酔ってるのかそうか。そういうノリなのネそうなのか。
「…甘いもの、食べるんですね。」
「おー、食べる食べる!」
「そぉですか。言質取りましたよ。食べるんですね?」
「…あれ?」
「私は前々からキッチンの方々っていうか、あーたに言いたい文句がありまして。」
ずびしっ
「ちょ、なんで指さし?! しかも人差し指と中指揃えて二本で指さす理由がわからん!」
「おだまんなさい。一本だと失礼なので二本です。」
「そういう問題?!」
おっと。目の前には売れ残りのティラミスが。おあつらえ向きだねっ!
「あーた。私が今回のバレンタインのチョコレートの試作を持って行ったとき。一度だって感想を返してくれませんでしたね。」
「それは他の人だって…!!」
「あ。俺返しましたよ。」
「俺もー。」
「なに?!」
「あーた以外の人。すでに帰宅なさった料理長さんも感想はくださいましたよ。」
「ちょ、俺まだ飲んでるから!」
「食べるんでしょう? ロールケーキ。甘いもの、食べるんですよねぇぇ?」
「飲んでから! 飲んでから食べるから!」
「問答無用です。選んでください二択です。」
A:このままティラミスを限界まであーんで食わされる。
B:自分でチョコレートを食べる。
「ええ?!」
「制限時間は五秒です。ごーよーんさーんぜろ。終わりです。」
「早! しかも最後省略されたし!」
「問答無用。口を開け。」
「ちょ、ま、えええええええ!!」
こんなくだらない日常(結局食べると宣言してティラミスを食べさせてあげる方は回避された。)(っち。)
「…。」
「食べないんですか。」
「や。飲んでるから。」
「じゃぁ生チョコで再チャレンジですね。口を開けこの野郎。」
「俺先輩なのに!」
「うっさいですね。サッサと一粒飲みこんでテンプレな感想を述べればいいんですよ。」
「酷い!」
「言質は取りました。軽はずみな発言を恨みなさい。いい加減にしないと鼻を摘まんで無理やり放り込むぞ。」
「マジで?! マジでやんの?!」
「…諦めたほうがいいですよ。この子はやると言ったらやる子です。」
「ええええ。」
「ほぅら周りの意見も同じです。口を、開け。」
え。その後? やだなぁ。私はやると言ったらやる人ですよ?