お題サイトよりもらってきました。
『生きるためには愛がいる』ーーーおかしいな。何でどうしてこうなった?
初めはそう、幼稚園に入った年のバレンタインだ。
バラ組で一番かわいい女の子(やっべぇ。名前忘れた。)と仲良くなった俺はそりゃぁもう期待してた。
きっと頬を染め上げてちっちゃいかわいい手で(当時はそんなに身長は変わらなかったはずだけどな! イメージだイメージ!)ちょっと戸惑いながら(重要!)俺にチョコレートをくれるもんだと夢見てた!
ちょっと現実に感づき始めた小学校。
若干の成長期が来たのか身長が伸びて背の高い方に分類され、その上オンナノコ達にもいい感じに話ができてた。
同じクラスのポニテのよくにあう女の子。いい子だった。すっげーいい子だった。超可愛かった。
俺はその子に誕生日のプレゼントあをあげたんだ。ほえほえと柔らかい笑顔で俺に「ありがとう」とか言ってくれた!(常識的に当たり前のやり取りだけどな!)
俺の誕生日にその子はちゃんとプレゼントをくれたんだ。俺もテレテレしながら受け取ったもんだーーー中身は生焼けのクッキーだとしてもな!
現実に歯向かう中学。
部活は陸上部だ。野球部は強制坊主だったから却下。サッカー部は変にチャラチャラしてたからさらに却下だ却下。
目立つ所で部活動にいそしんでた。確かに威張れるレベルじゃなかったさ。記録も中の中でごく平凡。
それでも俺は頑張った。部活動というかそこで生まれる人間関係を円滑にするため日々努力した!
俺と同じ時期に入部したショートヘアーの女子マネ(確か先輩だった。)とも、気軽に話せる信頼関係を俺は築き上げたんだ!
拒否り続ける高校。
俺は継続して陸上部に居た。ギリギリで補欠を免れ、レギュラーの座を(ただしドマイナー競技)誰ぞに譲ることもしなかった。
インターハイにだって行ったさ! 代表に選ばれて(そもそもやってるところが少なかった。)全国にだって行ったさ!
今度こそと俺は思ったっ!
ステキな先輩(もうすぐ卒業)とか可愛い後輩(妄想)とか! 下駄箱に白い封筒で丸っこい字で『放課後、部室で待ってます』とかそーゆー手紙を受け取り、沈む夕日に照らされた空間で、恥じらいながらアハハウフフ、みたいな展開を! 今度こそこの手にって思ってた!
そこからさらに月日は流れ。俺はついに学習した。
最早期待などしないと。期待すればするだけなくしたときの衝撃が大きくなり再起不能の期間が長くなる。
俺は辞めたのだ。脳味噌の中で爆発させてたイメージ映像もとい妄想を。現実にすることを。
そしてその作戦は粗方上手くいっていた。起こりうるはずのない現実と割り切ることで、ダメージからの脱出を図り続けた。
同い年のサラサラロングヘアーのオンナノコ。教授の女子で入ってきたゆるふあボブヘアーの女の子。
俺は余計なちょっかいもかけず、かつ細心の注意を払いながら生活を送った。
その姿がどう映ったかは知らねーが、ストイックでかっこいいという評価をいただいたらしい。ありがたい。
俺はじっくりと時間を積み重ねた。余計な手出しはせず、時間が積み重なり、機会が勝手に育って俺の前に落ちてくるまで待ち続けた。
もう大丈夫かな? 今度こそ大丈夫かな? ちょっとずつ様子を見て、俺は、ーーー俺はっ!
「って言う時に、毎回、毎回、毎っ回ッ!! 邪魔しやがって何が楽しいんじゃコルァァアア!!」
「HAHAHAなにを言う。」
「テメーが何言ってんだってーの。オイコラ。テメェ今度は何しやがった。」
「何も? ただまぁその子とお近付きになっただけさ。」
「それがダメだっつてんだろ?! 何してくれちゃってんのマジで!!」
「何を言う。これから幼馴染がお世話になるんだ。しっかり挨拶しなければならんだろう幼馴染として。」
「超巨大で余計な御世話だ一昨日きやがれクソカス。」
「人類はいまだ時間という壁を超えた日はないよ。」
「例え話に決まってんだろ額面通りに受け取んなよ!!」
「では君のこの熱い言葉も愛情の裏返しということだ。」
「ここは額面どおり受け取っていいんだよなんなんだその線引き!!」
HA−HA−HA−。やけに嘘くせぇ笑顔を口調のまま。俺に胸ぐらをつかみ上げられて揺れ続ける男。
生まれた時。俺たちはマンション住まいで、家が隣同士だった。ただそれだけのつながりだ。
就学前に俺の家は引っ越し同じ市内に新たな居住地を定めた。
だがこいつはっ! 近所のフンよろしくっ! 延々延々っ! 小中高大。一緒だった! いっしょだった!
「大事な幼馴染を心配して、何が悪いのだ…!」
「いーやっ。騙されねぇぞ。何回目だと思ってんだコラ。」
「さてね。」
煌びやか。そんな言葉を通り越して最早目に痛いだけの服装。
悪趣味なアクセサリー。軽薄そうな口調。
その癖に頭は決して悪くなく。運動だってお手の物。
歩くだけで異彩を放ち。取り巻くというか倦厭せざるおえない存在感。
幼稚園で教室内に大量のカエルを撒き散らし。
小学校でクラスで育てていた朝顔の種をほじくり返し。
中学で俺の後を追いかけるように入部し、賞状その他もろもろをカッさらい。鼻で笑って打ち捨てる。
高校で生徒会に就任し『逆らうモノは手を挙げろ。三年かけて地味に報復する。』と宣言し。
古今東西。関わったものを全て微妙な気分にさせ続けること二十二年。
「もうなんなの。なんなのお前。まじでなんなの。」
「お前の愛しい幼馴染だが。」
「愛しくない。全然愛しくない。なぁ知ってる? 俺毎回同じセリフで断られてんだよ?」
目を潤ませ。ためらいがちに。女の子はいつだってそう言うんだ。
『ーーーでもあの人の親友なんでしょ。余計なことするなって釘さしに来たのよ。わざわざ。』
生きるためには愛がいる。
「親友を心配する立派な友愛だろう感謝したまえよ。」
「愛は愛でもそれは哀だ。同族相哀れむの哀。まったく違う返品だ熨斗紙つけんぞ!!」
「すでにクーリングオフの期間は切れてる。残念だったな。」
「だぁぁぁああっ!! うっぜぇぇええええ!!」
「それにその言い分だと私達は同類ということだ。」
「違う! 断じて違う!」
「そろそろ認めたらどうだ? 二十二年来の親友だろう私たちは。」
「ウザ。マジでウザい。」