部屋の話。本編でーす。
今のところ走りを書いてみた。書いてるうちに思いのほかスペースがいりそうだと気づいたりもする。
これにちょっと文章を継ぎ足ししつつ。書きます一話目。
青褐結久は、どこにでもいる一般的な女性だ。
特段印象に残らない服、特段印象に残らない顔。良くも悪くも”どこにでもいそうな女の人”を体現していると自負している。
性格は極めて温厚だし、怒ったからといって手が出ることはない。長いものに巻かれる典型的な日本人だと本人は信じてやまない。
結久は片腕を挙げ、指先を額につけて目を覆うようにハァ、とひとつ大きくため息をついた。
目の前にはどだどたと音が聞こえる扉がある。
奥からはやれ「ここはどこだ!!」だの「えいへい! えいへいはおらんか!」だのと声がする。
声の質が妙に高い。おそらく相手は子供だ。元気に叫びまくる子供。それを想像してますますため息が深くなった。結久は子供が好きではない。
大体あのふくよかな体つきのどこから出るかわからない力強さがよくない。子供の突進力は時として他の動植物の追随を許さない。植物は動かないというもっともな突っ込みは今のところ無視である。結久にしてみれば、動く植物だっているのだと声高に主張するだろう。
「…、えいへい、は。多分”衛兵”よね…。」
大家さんに言われた通り。透けてはないらしい。しかしあの大家さんの情報をうのみにするだけではいけない。あの人の判断基準はどこかで狂いが出ている。
つらつらと文章を流しながら考えていると、中の音はますますヒートアップしていく。扉が粉砕される心配をしなければいけない。
結久は腹を決めた。
一歩前に出て、騒ぐ声が聞こえ続ける扉に手をやった。
「…一番。青褐結久。入りまーす。」
コンコン。ノックを二度。それから返事を待たずに部屋に踏み込んだ。