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ソロモンの偽証 第U部 決意 

進級した柏木卓也の同級生達は、受験に向けての夏の追い込みへと気持ちを向けていた。
事件について納得がいっていない学級委員長・藤野涼子は、大出を柏木卓也殺しの被告とした、学校内裁判をやらないか?と元クラスメートに持ちかける。反応はイマイチで、挙句、学年主任に殴られてしまう涼子は、その事を逆手に取り、夏休みの数日間、柏木卓也の死の真相を知る為の、学校内裁判を行なう事を、学校に了承させる。

大出の元彼女・恵子や、スポーツ推薦で進路が決まっている者などが集まり、陪審員をしてくれる事となった。当初、涼子は大出の弁護人を引き受ける算段だったのだが、大出の父の暴力から大出を守る為、涼子は検事側となってしまう。
また、弁護士側には他校生の和彦と野田健一が付いた。

大出の殺し疑惑を晴らそうと立ち上げた学校内裁判だったのだが、裁判の準備の一環として聞き込みをして回ると、大出の実家が放火にあった件については触れてはならないと涼子の父からも念を押される始末。
大出を柏木卓也殺しの犯人に仕立て上げた三宅樹里は、声が出なくなり不登校となっていたが、樹里の母がマスコミに向け、告発状を書いたのは樹里だと分かるような発言をし、樹里の立場が危うくなったと感じた。そこにつけこんだ涼子は、検事側の証人となってもらう。すると樹里は、大出達の犯行を見たのは自分ではなく、交通事故で亡くなった松子だと言い出す。

一方弁護人側では、和彦がどうして柏木卓也の死について、他校生なのに参加したのか、その真意を探りたい気持ちでいっぱいの健一だったが、和彦の複雑な生い立ちを聞き、深追いをやめる。
父親が母親を殺し、生き残った和彦は現在、養子となり生きていて、何故生き残ってしまったのかと自分の存在意義を考えてしまっていた。しかし、和彦の生い立ちをどこからか知った柏木卓也は、和彦について美術教師に話した上で、友達としての発言では考えられない事を口にする。
それを美術教師から聞いた健一は激怒し、和彦も何かを感じ取ったようだ。

大出の放火事件は、痴呆の始まっていた祖母の財産であった家を売りたかった大出の父親が、業者に頼んで放火のように見せかけたと警察が突き止め、大出の父は警察に拘束されてしまう。
自分の身の証を立てたいと、証人を引き受けた元担任・森内と津崎元校長、涼子が取引をした茂木記者、そして大出本人も、大出の父親が逮捕されたことで、自分の意見を言えるよう踏み出す。
そして運命の学校内裁判が始まる。

『ソロモンの偽証 第U部 決意』

『ソロモンの偽証 第T部 事件』

城東第三中学校の野田健一は、通用門から登校しようとした時、雪の中に埋もれて亡くなっているクラスメイト・柏木卓也を発見する。
柏木卓也は登校拒否の生徒だった事もあり、学校では当初、いじめも囁かれたが、いじめと呼べるほどの事はなく、自殺であろうと考え、警察も処理した。

柏木卓也が亡くなった後、クラスメイトの鬱憤は、学校関係者、柏木卓也の家族、マスコミを巻き込む大騒動となりそうで・・・。

『ソロモンの偽証 第T部 事件』
著者 宮部みゆき
発行者 株式会社新潮社
ISBN 978-4-10-375010-9

柏木卓也は達観した子で、自分が病弱である事が、家族の結束を強め、結果的に柏木卓也中心の家庭となっている事を自覚し、それを利用しているフシがあった。巧みに両親を支配し、兄への両親の愛情を欠けさせる事で、兄を標的に楽しみ、支配下に置く。しかし兄はそれに気付き、高校入学と同時に両親と柏木卓也が住む実家を離れ、祖父・祖母と暮らすようになる。

第一発見者の野田健一は、精神病の母を抱えており、本当は賢いが学校では目立たないよう自分を装
っている。母を支えながら生きていくはずの父が、バブルで土地が高騰しているという口車に乗り、騙されそうになっている事も重なり、両親を殺害し、父に罪を着せようとまでも考えるが、健一の友人・向坂行夫により阻止される。

柏木卓也のクラスの学級委員をしている藤野涼子は、文武両道の剣道少女で、警視庁の父と士業の母、妹が二人 賢く美しい。中学生ながら物事を俯瞰して見る事ができる子で、自分と同じように物事を見られる友達を求めている。
他クラスで劇作家志望の美人・古野章子がそれに当たるが、同じクラスの倉田まり子とつるんでいた手前、章子と比べると浅はかなまり子を鬱陶しく感じてしまう一方、まり子を完全に切れない感情もある。

妹思いで優しい向坂行夫は少々鈍いように見えるが、健一の事をよく見ており、健一が両親に手をかけるような事態になった時、健一と電話を繋ぎながら涼子の家へ助けを求めるというファインプレーを見せる。

行夫の幼馴染・倉田まり子は時間にルーズなどおおらかなところがあり、涼子には苛つかれ劣っていると思われてる。

ニキビ面が原因で内気になり、そのコンプレックスをつかれてしまう三宅樹里は、その事で大出達に恨みを持ち、大出達が柏木卓也を殺したという虚偽の告発をする。松子を支配しているつもりだが、実際に孤立しているのは樹里である。

樹里の友人・浅井松子は太ってるが優しく友達が沢山おり、樹里が告発をした事を知っているが先生達に黙っている。

樹里の恨みを買った大出俊次は、建設会社の跡取りの為、勉強しなくても良いと言われ好き放題の不良化している、いつもつるんでいる3人のリーダー格である。顔が整っている事や、中学生が先生に反発しているというところから、生徒達の間では一部に人気もあるようだ。

大出と行動を共にしている井口充は、大出と同じく家業がある為、放任主義の母と子供に無関心だった父を持つ、しかし父は少し見所があるようだ。

井口と同じく大出と遊んでいる橋谷祐太郎は大出の子分だが、母子家庭で大出にいつも従っており、主従関係があるようだ。

城東第三中学校の校長・津崎は、何かと決断を迫られる立場だが、教育委員会ではなく生徒を向いている喜徳な善人、通称豆だぬき

高木学年主任はわりと保守的で自分を守りに入る事も多いが生徒の小さな傷に気付く先生でもある

生徒に人気がある保健室の尾崎養護教諭は、三宅樹里が虚偽の告発状を送ったと見抜くが、津崎校長と共に樹里を見守ろうとする。

柏木卓也のクラス担任・森内恵美子は、教師になってまだ日が浅く、生徒を贔屓する、生徒が自殺するという不憫な境遇に置かれるが、教師としての自覚に若干欠けるところもあり打算的にも見える、通称モリリン

森内教諭の隣人・垣内美奈絵は、自身が離婚を切り出され乱心したところに出くわし笑われた事で逆恨みし、樹里が森内に宛てた告発状を郵便受けから盗み、テレビ局へ送りつけてしまう

涼子の父の協力もあり、三宅樹里に対し告発状に気づいたよという対応をしようと白東第三中学校まで調査に来てくれた々木礼子刑事は、少年課所属という事もあり大出達を補導した経験もある。大出達についてはさほど問題人物だとは思っていないフシがある。

茂木悦男 ニュースアドベンチャーの記者、垣内から送りつけられた告発状を持ち、津崎校長に会いに来る。最初は報道マンとしての使命からやってくるが、告発状を中学校が隠蔽したと思い、何としてでも報道しようと強行する。

柏木卓也の兄・浩之は、津崎校長が虚偽のものであるからと柏木一家を動揺させない為にも、告発状を伏せておいた事にひっかかり、卓也の死後、すっかり憔悴した両親に代わり、中学校と戦う姿勢をみせてしまう。

樹里の嘘に気付いた松子は、樹里を説得しようと走り出し、車に轢かれて亡くなってしまう。松子がまるで自殺の様に亡くなった事で、告発状は松子が出したのではないかと噂が広まり、気の優しい松子が涼子に助けを求めようと名指しで告発状を送ってきたのではないかと考えた涼子は、具合が悪くなり保健室へ。そこで会ったのは、獣の様に笑う樹里だった。

ほどなくして樹里は口がきけなくなり学校を休みがちになる。そして告発状は松子ではなく、樹里が主導でやったのではないかと生徒達は考え始める。

二人の生徒が亡くなった事で津崎校長は辞職し、津崎校長とマスコミに泥を被せる形で、学校には平穏が戻ったように思えた。しかし告発状をテレビ局に送ったのは橋谷祐太郎ではないかと井口充と喧嘩になり、橋谷が窓を破って転落する事故が起こってしまう。
再び注目が集まった城東第三中学校。

柏木卓也の学年は3年生になり、クラス替えにより受験へとシフトチェンジしていこうとしていた矢先、大出の家が燃え、放火の疑いがあるらしいと聞く涼子。
自分達のクラスメイトが二人も亡くなり、そして未だに柏木卓也の亡霊がいるように、事故が重なっている。そこで涼子達元二年A組は、自分達なりに柏木卓也を始めとする一連の事件を解明しようと考える。

750頁くらいあって、手にもずっしり来るので流し読みしながら進めようかなと考えていたのだが、一文一文に無駄が無く、引き込まれた。まるで私も城東第三中学校の関係者の様な気持ちで、教員サイドに立って津崎校長の苦労を考えたり、涼子の家族になってみたり…。
すごく面白いです。さすがに長いからあっという間とは言えませんが、読むのは全然苦じゃなかった。

有頂天家族 二代目の帰朝

有頂天家族、二巻目。

“面白く生きる他に何もすべき事はない。まずはそう決めつけてみれば如何であろうか。”

父は素晴らしく化けるのが上手かったが、ちょっとしたヘマをし弁天により狸鍋にされ亡くなってしまった。父に影響されたのか、親譲りの“阿呆の血”で天狗の様に人間に化ける私は、父を喰われ、自分も狙われているというのに初恋の人・弁天の手紙を待ち続けている。

かつて人間の少女であった弁天の能力を見出だし、自らの愛弟子にした天狗・赤玉先生をも手玉に取り、自由気ままに行動する弁天は、世界旅行をしているらしい。
そんな腑抜けた赤玉先生の元に、喧嘩別れをしていた弟子である二代目が帰ってくるなり、赤玉先生に勝負を挑む。弁天さえいれば二代目にも勝てたであろう赤玉先生は、負けてはいないと主張するものの、二代目との能力の差は、歴然だった。

一方、狸の長男は狸鍋にされてしまった父も得意としていた将棋を通じて恋をする。私は長男の恋を応援したいと奔走し、とうとう長男は父の偽右衛門に襲名でき、結婚をする。

そんな中、村には地獄絵から抜け出してきたという男が住み着き、村の住人をからかって遊ぶ。何とかせねばと本人に会いに行った私は、男は弁天を恐れていると知り、弁天の帰郷を願う。

赤玉先生と二代目の不毛な戦いの最中、世界旅行に旅立ったはずの弁天が帰ってきた。大喜びする赤玉先生と、弁天を憎き相手だと言い放つ二代目。
赤玉先生の継承者としてどちらが次の天狗となるのか、弁天と二代目は対決をし、なんと弁天は負けてしまう。スマートな物言いに腸煮えくり返る弁天。しかし結局、二代目は赤玉先生に敗北し、悔しかったら強くなれと言われてしまう。

次男が、旅に出たいと言い出し、私は反対するが母や長男の応援もあり、次男は旅立つ。そして私にも立ち消えになっていた結婚話が、許婚が再来する事により浮上する。が、こちらはまだまだ一悶着ありそうである。
一巻や二巻冒頭では、相変わらず向かうところ敵無しの弁天様最強という感じでしたが、二代目に負けてしまったり、弱った弁天を励ます日が来るとは…。
弁天に必要なのは狸の自分ではダメなのだと自覚するところはホロリときました。好きな人だからこそずっと見ていて、自分じゃない他の人が必要なのだと分かったとしても、それを自分の中で納得させるのは辛いことだよなぁと。
三巻も楽しみです。

『有頂天家族 二代目の帰朝』
著者 森見登美彦
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 978-4-344-02727-5
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