20年前、余命二ヶ月と宣告された大学三年生の俺は、思い残して幽霊になりさ迷ったりしない為に、結婚してしまった高校の先輩に告白をしに行こうと決心した。
先輩の家に向かう途中、商店街に突如現れた通り魔と目があった俺は、腕を刺されてしまう。
特に激しい痛みも感じなかったが、丁度ワゴンセールで店の前に出ていた靴屋さんのスニーカー達を通り魔に投げまくり、その場を諌める。
シュールすぎる光景に圧倒されていた周囲の人だが、やがて我にかえり救急車をすすめるが、彼は断る。
だって、告白しに行く途中だから。
左腕からダラダラと血をたらしながら先輩の家に行く彼は、ビックリしつつも手当てしてくれた彼女に告白するが、当然、フラれる。
まだ若いんだから、また新しく誰か好きになれるよ
その事件から20年後の現在。
商店街の人々と彼女のその後の話。
『僕の小規模な奇跡』
イルマ ヒトマ
著者 入間人間
発行者 株式会社角川グループパブリッシング
ISBN 978-4-04-868121-6
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
大学に入学して二週間。彼には一目惚れをした同級生が居た。
クールすぎる彼女に半ばストーカーの如く付きまとう彼は、彼女にあの手この手を使わなかったお陰か、ストーカーから私を守ってくれるなら付き合う。と訳のわからない条件をのんでしまう。
美人である彼女には昔からストーカーが居たそうで、ストーカーには慣れているらしい彼女が、今回のストーカーは気味が悪いと言うのだ。何にせよ、彼女と付き合える事になった彼は喜ぶが、付き合うとはいっても彼女は手を握る事はおろか、同じ食卓で食事を摂る事も許さなかったのだ。
しかし彼は全く気にした様子はなく、むしろ落ち着き払い、どっしりと構えていた。その態度に苛立ちを覚えながらも、調子を崩される彼女は少しずつ素直になっていく。
高校を中退して、商店街の靴屋でバイト中の17歳は、その靴屋にスニーカーばかりを物色しに来る自称絵描きの男と出会う。
彼は、20年前のあの通り魔事件を写真で見て、その絵を描こうとスニーカーばかり買っている事を知った少女は、絵描きの家に絵を見せてもらいに行く。
部屋の奥から出してきた何枚もの絵を見ていた少女は、どうして絵を部屋の中で隠すのか不思議に思い、絵描きに問うと、絵描きの妹が破ってしまうからだと言う。妹は、自分が絵を書いているのが気に入らないのだと。
絵描きから貰った美術館のチケットを、少女はデートする事になったという自分の兄にあげる。そして兄は意気揚々と彼女とのデートに向かったのだった。
大学生の彼と彼女は、美術館に来ていた。
彼女がトイレに行った隙に、彼は何者かに刺されてしまう。それは何と、彼女の長年のストーカー女であった。
ストーカー女は彼女の居るトイレに向かい、彼は慌ててストーカー女を追う。
個室に入ったままだった彼女に出てこない様に指示した彼は、未だナイフを持つストーカー女と対峙する。
個室から警察に通報した彼女の努力も虚しく、もう刺されると思った時、ストーカー女目掛けて飛んできたバッグは、彼の妹の物だった。
絵描きの妹がデートに行くらしいと嗅ぎ付けた絵描きと少女は、暇潰しにデートをつける事にした。すると彼女のもとに現れたのは、少女の兄である彼だったのだ。
美術館に行くと分かってしまった二人は帰ろうとブラブラ歩くが、折角だからと同じ美術館を目指す。そこで女に刺された兄を見た少女が、兄を助けに入ったのだった。
御用となったストーカー女を見送った彼は、ストーカーから守ったからもう付き合いは終わりかと病室のベッドで彼女に聞くと、彼女はそんな彼にキレの悪い毒舌を吐いたのだった。
かくして兄弟同士で付き合っている兄達は、互いにいつか義兄さんと呼ばなきゃいけないのかと話し、苦笑いするのだった。
この小説、名前がいっこうに出てこないんで、どう書こうか迷いました。
20年前の事件の通り魔が、告白しに行った先輩の旦那さんだったなんて、すごい偶然だなと感心しました。そりゃ、咄嗟に動けなくなるわ…と。
にしても、20年後の彼が凄くおおらかな人で、それが不思議でした。優しいんだか、抜けてるんだか、ちょっと前に流行った脱力系ってヤツですかね?
何を考えて生きているのか、インタビューしたくなるくらい、私には不思議な人物像でした。
なんか出来すぎてる感も否めなかったけれど、結構面白かったです。