人には言えない仕事をしている岡田と溝口の周りで起こった、過去と現在の愉快な話。
『残り全部バケーション』
著者
伊坂幸太郎
発行者 株式会社集英社
ISBN 978-4-08-771489-0
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
「残り全部バケーション」
離婚し早坂家は解散する。最後に一人ずつ秘密の暴露をしあおうと言い出した母にならい、父は会社の事務の子と浮気をしていたと爽やかに告白した。
沙希は夏休みに一泊で海に行ったのは男の子・古田健斗と一緒だったと言う。
お父さんに来たメールを見て、絶対にナンパだと警戒した娘だったが、友達がほしいと言った父に、母は良いじゃないと言う。
「子供作るより、友達作るほうがはるかに難しい」という溝口は、人を脅して金を取る仕事から抜けたいと言う岡田に、今すぐ適当な番号にメールをし、友達を作れ。作れれば足抜け。作れなければ耳を切り、今まで通り裏稼業をするというゲームをする。
父が岡田の友達になったことで裏稼業から抜けられた岡田は、沙希に無職は駄目だと言われ、「明日からもう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなものだし」
溝口は自分が助かるために、岡田を売った。
岡田は溝口と一緒に当たり屋をした相手に協力を仰ぎ、お父さんから虐待されている子供を助ける。
溝口が前に言っていたことを思い、自分自身の言葉なら耳を貸すだろうと思い、未来からやってきた自分だという設定を作り込み、お父さんへ忠告する。
溝口は新しい相棒が気のきかない奴で、女を誘拐し、倉庫に閉じ込める仕事を引き受けた。道中、たまたま手に入った車のトランクには、札束が沢山入っていた。
警察の検問に引っかかったが、警察はトランクの中を見ても何も言わなかった。
可笑しな検問に通された溝口たちは、ニュースになっている男の不倫相手だったが、殺害道具を処分する係の女を解放した。
岡田は小学生の頃から変わっていた。
海外でスパイ活動をしていると思っていた父は、離婚したばかりで父親が不在の状況を慣れさせようと、岡田少年との交流を絶たれた父が、双眼鏡で岡田少年の学校を見守っていた。
それが功をそうして、弓子先生のストーカーを撃退したのだ。
岡田を売って事なきを得た溝口は後悔していた。そして、岡田の仇をうとうと考えた。
毒嶋を打とうと計画をたてた溝口は、岡田を見習い、それっぽく見せた。それは人を騙す手口だった。
しかし、後一歩というところで岡田は生きていると毒嶋が言い出す。
甘いもの好きの岡田は、生き延びて甘いものをテーマにしたブログをやっていた。
溝口は手下に、ブログにメールしろという。
岡田なら返事を送ってこいと。
『友達になろうよ。ドライブとか食事とか
子供を作るより、友達作るほうがはるかに難しい』
メールの着信音が鳴った。
岡田か、焼肉屋か…。
伊坂幸太郎らしい作品でした。
岡田の人生は、伊坂幸太郎が行きたかった人生なのかもしれないなぁ。
それくらい、岡田は大変な環境にいるのに、イキイキしてます。