車同士が人間の様に話をするという想像を加えた現実世界。
緑のデミオは仙台で免許取り立て20歳の男が運転している。10歳の割に達観した弟を助手席に乗せて走っていたところ、引退した女優が乗せてくれと乗り合わせる。
無事に送り届けた後、女優は不倫相手の運転する車で事故に遭い、亡くなってしまう。
『オー!ファーザー』の由紀夫の四人の父親とお母さんが少し出てきて、伊坂幸太郎ファンとしては嬉しい展開もあります。
『ガソリン生活』
著者
伊坂幸太郎
発行者 朝日新聞出版
ISBN 978-4-02-251062-4
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
不幸な事故に世間は食いつく。女優を乗せたせいで、マスコミから取材される望月家の兄と弟は、女優の死について首を突っ込む。
そんな中、望月家の長女は、交際している彼がトガリという悪い男から、死体を掘り出し運べと脅されていると知り、長女を心配した望月家は巻き込まれる。
夜回り先生をしている望月家の隣人の校長とマスコミ記者の助けもあり、望月家は事なきを得る。
トガリの報復を恐れたトガリの子分に、心配しなくてもトガリは帰ってこないと記者は言う。
女優とその不倫相手ではなく、亡くなったのは、トガリとその女なのではないかという弟の推理を投げ掛けると、マスコミ記者は花丸と言うのだった。
女優と不倫相手は生き延びて生活をし、兄と弟は普通の生活に戻る。
弟の友達をいじめているいじめっ子に一泡ふかせようと、弟は記者の協力を仰ぐ。
弟はいじめっ子を下し、そして年月は過ぎ、緑のデミオは望月家からいなくなった。
久しぶりに実家に集まった望月家の皆の前に、弟は現れた。
緑のデミオに乗って。
「久しぶりだな、ザッパ」
緑のデミオがそう言ったのを、長女の娘は聞いた。
車が喋るなんて、面白い設定だなぁと思いました。
二輪の自動車やバイクとは言葉が通じないのに、列車とは話せるとか、夢が膨らみました。
弟君の成長を見ていきたかったけれど、あの小説の分厚さでは、上下巻にしないと駄目だから厳しいですよね。
伊坂幸太郎らしさは残りつつ、近年の伊坂幸太郎の様に政治をきったりもせず、しっかりどんでん返しもある。面白かったです。こういう伊坂幸太郎の小説がずっと読みかったんです。