元ヤンで元ホストの大和は、ハチさん便の宅配のお兄さんだ。
頭は良くないが、真っ直ぐに物事を受け努力する姿勢が気に入られ、周りに恵まれて昼の仕事に復帰できた。
ハチさん便で宅配バイトをしているうちに、突然やって来た小学5年生の進は、大和の息子だという。ホストだった時分に、付き合っていた女・由希子は、大和を振って大和の子供を一人で育てていたらしく…。
『ウィンター・ホリデー』
著者 坂木司
発行者 株式会社文藝春秋
ISBN 978-4-16-384440-6
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
夏休みや冬休みに大和の家に来た進は、大和と交流を深める。
宅配便のお兄さんとして、様々な失敗をしながらも、地域密着型のサービスで頑張る大和。
順調だと思われた進との関係も、雪夜の忠告通りとなってしまう。
物を置き始めるのは、別れの前兆だから気を付けたほうがよいと忠告する雪夜。
「所有したと思った瞬間から情熱や興味は薄れていきます。それは物も人も同じ。」
“所有は安心を呼び、安心は退屈を呼ぶ。すると刺激を求める心はまた別の誰かを探すことになって、破局を迎える。これは人間関係の基本じゃないかな。”
「名前のつけられない想いほど、大切にしなさい」
元ヤンの大和をホストとして拾い、昼の世界に戻す為にハチさん便を紹介したホストクラブのオーナー・ジャスミンから、言われた言葉が身に染みる。
「私たちは、二人だけの家族なの。二人っていうのはね、一人が欠けたら、どちらもひとりぼっちなの。こわれやすい家族。」
“二人は簡単に一人になる。”
進は、いつか大人になる。
進を見つけ、身を呈してひったくり犯の暴走バイクから進を守った大和は、ひったくり犯を目撃し、街を守ろうとした理科さんとコブさんを見て、自分の仕事を誇りに思う。
“なるほど。誰よりも街を知るからこそ、街を守ることもできるんだな。”
全力で怒る進の母に、進は小さなつぶやきをもらす。
「お父さんとお母さんに、会ってほしかったんだ」
健気な進に、大和の職場の人間や後輩たちはそうかそうかと帰っていく。
“俺は、お前らのことを誇りに思う。”
「進をこんないい奴に育ててくれて、ありがとう」
「選ばなくても済むようなことを、悩ませてごめんな。俺たちの子供に生まれてきてくれて、ありがとう」
進は友達と、婚姻届に判を押させる計画を思いついた。
「無理矢理出そうとか、そういうんじゃないんだ。ただ、そうなったところを見てみたいな、って」
「好きにすればいい。俺の運命、お前にやるよ。好きに使え。どっちに転んだって、俺に異存はない。」
全てを見ていたナンバーワンホスト・雪夜は、「別れじゃなくて、『旅立ち』って呼ぶんだと思う。」と大和にこぼす。
巣立ってしまったら、もうそこには帰ってこないから、『旅立ち』で良いのだ。と。
そんな雪夜にジャスミンは、「自分の弱さを自覚しない人間は、脆いんだから。たまにつついて自分を完璧だと思い、自滅しないようにしてあげる」と言う。
子供が頑張るってのは泣けますね。
もう可愛くって、良いなぁと思いました。
真っ直ぐな大和に似て、ちょっとバカなくせに、変なところを気を遣う進が愛らしくてたまりませんでした。