Silhouette of wonderland

既に半世紀を生きた登場人物達の、忘れてたモノや見失いつつあったモノを、ふとしたキッカケで思い知る。
不思議なものだけど、自分の人生が上手くいってる時期は、過去を振り返る回数が少ないのに、落ち着いてしまったり、時間に余裕が出来ると考え出す…。そんな事って、誰しも経験のある事で、それが柔らかいタッチで描かれているのが読みやすく、誰か本当に心を許している人に「駄目でしょ？」と叱られている様な、心地よさがありました。

個人的に一番好きなのは「妻のパジャマ」。
奥さんが入院した時に、旦那さんは初めて家の事をするんだけど、これが可笑しくて可笑しくて…。私の家は共働きなので、家事は殆ど私が取り仕切って来たのがいけなかったのか、母も父も「あれどこだっけ？」とか「これどうやって使うの？」とか言ってます。
だから旦那さんが「パジャマはＭサイズだ」と自信を持って言った時、奥さんは本当に嬉しかっただろうなと思いました。

素敵な小説でした。短編集なのでそんなに気負わず読めるし、お勧めです。