二十歳で結婚し、子供・雪を連れて離婚し、職探しを始めた珊瑚は、子供を預ける場所がなく途方にくれていた。
普通の家に貼られた紙を見て、仕事をしている間預かってもらうことにした珊瑚に家主の藪内くららは、仕事が安定したらお金をもらうと言ってくれる。
『雪と珊瑚と』
著者 梨木香歩
発行所 株式会社角川書店
ISBN 978-4-04-110143-8
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
ネグレクトだった母から育てられた珊瑚は、人に同情されるのが嫌だと思いつつも、誰かに頼らねばならない人生を生きていく。
出産前にアルバイトをしていたパン屋に戻り、アルバイトを始めるが、パン屋は来年閉店するのだという。
くららの博識さと料理の腕から、カフェを開こうと考えた珊瑚は、くららの甥や友人の力を借り、少しずつ形にしていく。
「知ってることは何でも教えてくれるんだけど、偉そうじゃないし、おっちょこちょいのところもあるし。話題が豊富だから飽きないし」
「何よりいいのは、相手がどんな事やらかしても、絶対軽蔑したり責めたりしないんだ。いつも、その人と一緒に考えてくれる」
くららと出逢えたことで、少しずつ良い方向に向かう雪と珊瑚の暮らし。
パン屋で働いていた頃に嫌われていた女性から、中身がなにもないんじゃない?と言いたいことだらけのキツイ手紙が届いた珊瑚。しかし、そのこともバネにして珊瑚は頑張る。
“人と人との関わりで、一方だけが恩恵を受けるなんてことはないよ。必ず相互作用があるものだから”
優しい中にも厳しさもあり、美味しそうな小説でした。