玉之丞との暮らしに慣れ、最近では話しかけるようにもなった久太郎。いつものように玉之丞を猫見屋へ連れていくと、診察代が支払えない久太郎は、薪割りをしていた。
どにゃつぼうの売れ行きが思わしくない若菜は、最近出来たのだという、猫を飼えない人達が束の間を猫と過ごす、現代でいうところの猫カフェに客を取られていることを知る。憤慨しながらも屋台に戻ると、屋台は壊されてしまっていた。
いつも明るく元気な若菜であったが、さすがに落ち込んでしまう。若菜を見る久太郎の言いたいことが分かったのか、若菜は帰る場所がないのだと身の上話を始める。
『猫侍 (下)』
著者 亜夷舞モコ
原案 黒木久勝
発行所 TO文庫
ISBN 978-4-86472-207-0
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
貧しい田舎の百姓だという若菜の実家には、肺病にかかった妹がおり、薬代の為に遊廓へ売られるところを逃げ出してきたのだ。江戸に着くまで優しい人達に助けてもらいながら、「女郎になるより稼ぐから、堪忍して下さいって…」そう思って生きてきたのだと言う。猫見屋で猫は人を癒す効果があると聞いていた久太郎は、口下手な自分の代わりに玉之丞に若菜を慰めてもらう。
一方、加賀屋では玉之丞殺しの犯人を捕まえる為、石渡が身近な人物なのかも知れぬと佐吉の不安を煽り、佐吉が尻尾を出すのを待っていた。
侍としての職を探していた久太郎は、同門の内藤との勝負でわざと負ければ、就職を世話してやると言われ、八百長をするべきか悩んでいるところを、佐吉に呼び止められる。
本当に玉之丞を殺してくれたのか確認に来た佐吉を追い返す久太郎だったが、石渡にその場を見られ、佐吉は水責めにされ、自白を強要されていた。石渡の部下が久太郎の部屋に残ってしまった為、部屋に帰れなくなった久太郎は、猫見屋の店主・お七の案内であばら家に避難した。そして久太郎は八百長試合をすることに決め、代わりに家を用意してもらえるように頼む。久太郎はとうとう妻と娘・ハルを呼び寄せ、玉之丞と一緒に暮らす決心がついたようだ。
水責めにより口を割った佐吉は、加賀屋の主人に本当の事を話し、玉之丞が入っていると久太郎に渡された壺を見せる。蓋を開けるとそこには梅干しが入っており、玉之丞が未だ生きていると知った佐吉は、久太郎に騙されたと怒り狂う。
久太郎の仮住まいであるあばら家に辿り着いた佐吉は、玉之丞と共に昼寝をしていた若菜を見つけ、侍を雇うのだった。
久太郎は八百長試合の為、屋敷に来ていた。あと少しで試合が始まるという時に、お七から玉之丞の危機を伝え聞き、久太郎は試合を断り玉之丞のもとに走る。
“世の中には銭より大事なものがある、と父上は言っていた。父上の言葉の意味、今ようやく分かった気がします…”
佐吉が雇った侍に斬られようとしていた若菜と玉之丞の元に、久太郎は現れる。侍を追い払い、佐吉を倒した久太郎は、玉之丞を加賀屋に返すこと決める。「…逃げるのは止めた。俺は、まっすぐに生きる」
罪人となってしまった久太郎だったが、加賀屋の主人にお七が直談判したお陰で、久太郎は牢から出ることが出来、元の暮らしに戻れたのだった。猫がいなくなった以外に代わりはないのに、寂しくてたまらない久太郎。傷心の久太郎、庭先に玉之丞が現れ驚く久太郎。玉之丞を抱き締めたところ、内藤が訪ねて来て勝負を挑むが、久太郎はそれどころではない。変わったのだという久太郎に、猫侍と言い残し、去っていく内藤。
加賀屋に返ったはずの玉之丞は、久太郎の元へ戻ってきているのではないか?と考え、主人が訪ねてくる。久太郎と一緒にいた玉之丞を見て、玉之丞のしたいように、久太郎と加賀屋を行き来させたいと言い、久太郎はまた玉之丞と暮らせるようになったのだった。
仕事は決まっていないが、一度こちらに来ないか?と妻に手紙を書いた久太郎。それを読む妻の目には、涙が浮かんでいたのだった。