“端から見れば取るに足らない理由かもしれない。でも、その小さな理由がなければ人は生きていけない。”
『小さな理由』
著者 森浩美
発行所 株式会社双葉社
ISBN 978-4-575-23688-0
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
「いちばん新しい思い出」
中学に上がる前に、離婚して元妻と共に去った娘が、12年振りに尋ねてきた。来月、結婚するのだという娘は、離婚して1年も経たない内に再婚したので、結婚式に父を呼べないのだと謝る娘。結婚式に読む両親への手紙を書いてきたから練習させてくれという娘は、父への思いを手紙に託す。
「夜の鯉のぼり」
未婚の母に育てられた父は、祖母や従兄弟達のいびりに耐えながらも自分を育ててくれた母に、離婚することになったと伝えなくてはならなかった。孫にもう二度と会えなくなるのかと寂しそうにする母に、父は孫を連れて母の元へ行く。母と精一杯生きてきた父は、母と共に見た、祖父が夜にこっそり上げた鯉のぼりを思い出すのだった。
「皿を洗う父」
無口で無趣味だと思っていた父は、昔から苦労をして育ち、私と弟に愛情を注ぐ母。父は、自分を見初め、雇い続けてくれた会社の為に退職することを決めた。
「手のひらが覚えている」
兄夫婦と同居している母が、突然家にやって来る。少しずつ疎ましく思われるようになった母は、自分がボケてしまう前に、息子に会っておきたかったのだと言われ、はっとする。
「黒たまご」
小学生の息子が学校を抜け出し、黒たまごを買いに温泉まで行く。父が死んだのは自分がインフルエンザで温泉旅行が中止になり、父が黒たまごを食べなかったからだと思い、母に黒たまごを食べさせようとやってきたのだという。
全体的に暗い話です。