死んだはずの兄と暮らし、料理まで作って、外を出歩く事も出来る私は、兄が死んだ原因だけがすっぽり抜けてしまっている。

兄が消えてしまうような気がして、兄にどうして死んだはずの兄が生きているのか、死んだ原因は何なのかを聞けずにいた。
海外で暮らす母からの手紙で、兄は、私が忘れた自転車を取りに行った事で、水流にのまれて死んだのだ。

「俺がこうして現世に戻ってきたのは、心残りがあったからだそうだ。それは多分、お前の事なんだと思う」
人生の先には楽しい事ばかりじゃない。それでも俺はお前に希望を見てほしい。この世界のいいところを、美しさを、ちゃんと求めてほしい。

『九つの、物語』
著者 橋本紡
発行社 株式会社集英社
ISBN 978-4-08-771216-2

橋本紡さんは、生死を絡めた話が多いけれど、これは上記の「青い屋根の家」が一番良かったです。