目が見えなくなった私は、父親と二人で暮らしていた家で、父親が亡くなった今も一人で暮らしている。
ほとんど見えないが、フラッシュ等の強い光だけは、小さな赤い光が見えるのだ。私の家の近くに住んでいる学生時代からの友達が、役所や買い物に付き添ってくれるので、私はそれに合わせ、後は家に引きこもって生きていた。
そんなある日、家の中に誰かがいる気配がする。友達から、私の家の最寄り駅で、ホームから突き落とされた人がいたのだと聞き、家の中にいる人は、その犯人なのではないかと思う。
『暗いところで待ち合わせ』
著者
乙一
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 4-344-40214-6
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
目が見えない事で、玄関のインターホンが鳴っても確認する手段がない為、玄関のドアを開けるしかない。
駅で男が突き落とされた事件の日、私の家のインターホンが鳴りいつもの通り出ていくが、誰も返事をしなかった。そこで私は玄関から出て来客の気配をはかろうとし、その瞬間に、犯人は家に上がり込んだのだ。
犯人は息を殺し、私に気付かれないように身を潜めていたが、私と共に暮らすうち、私の上に落ちてきた土鍋を受け止める事で、私にその存在を示してしまう。咄嗟にありがとうと口にし、私は犯人の存在を知っていると態度で示す。
そして、犯人と共に食卓を囲むようになるが、犯人と私は会話をしない。
友達しか身近にいなかった私の家を、洗濯物が飛んできたと訪ねて来てくれた近所の女性がいた。彼女は私が目が見えないと知り、大層心配して、出来ることは協力すると言ってくれる。彼女の働く店に友達と訪ねた私は、数年ぶりに出来た友達が嬉しくて仕方ない。
外に全く出ようとしない私を心配した友達と、心許ないので白杖を使いたくない私は喧嘩をする。なんとか友達に謝って関係を修復したいと友達に電話するが、すぐに切られてしまう。
泣きながら外に出て、友達の家に行こうとするが、過去のトラウマから中々外に出られない。玄関で立ち尽くす私に、犯人は外に出ようと示す。犯人の協力で友達の家まで辿り着けた私は、犯人に先に帰っているように話す。しかし、犯人は帰っていなかったのだ。
犯人は駅のホームから突き落とされた男の同僚だった。男は職場でいじめをしており、二股をしていることや、人を貶すことを自慢するような輩で、途中からは犯人がいじめのターゲットだった。殺してやりたい、そう思った。あの日、ホームで男を見て背中を押してしまいたい気持ちが沸いた。ただ、犯人が押すより先に、女性が男を突き落としたのだ。犯人は目撃者だったが、自分が指名手配され、怖くなって逃げてしまう。
男を突き落とした女性を探そうと、私の家に戻らなかった犯人は、私から借りた父のコートのポケットから、女性と私の写真を見つける。そして女性を探す為、再び私の元を訪れる。
犯人が帰っていなかった事で、私は最寄り駅の駅員に、事件の概要を聞きに行く。
私の家に洗濯物を届けてきた女性こそ、男を突き落とした女性だったのだ。あの日、いつものように窓を開け、駅の方向を見ていた私を見て、自分の犯行が気づかれたと思い、女性は洗濯物を盗み、私を殺しに来たのだ。しかし、私の目が見えないと知り、指名手配犯も別に出来、安心していたのだ。
犯人は女性と男が一度だけ、ホームで一緒だったところを見ていた。多分、女性は二股をかけられていたのだろう。女性と共に犯人は出頭し、犯人は犯人ではなかったとわかるが、既に2週間も逃げていたので犯人であるという世間の意識は免れなかった。
犯人は自ら辞表を出し、アパートも追い出されてしまう。そして、私の家に居座る。
なんか不思議な引き込まれ方でした。途中まで何度も犯人が家に住み着いているんだと友達に言おうとするが、タイミングを逃し、また犯人と心が通い始めると躊躇する。
目が見えないまま、ただ死んだように生きている私は、女性を追い詰めた時首を絞められても抵抗しないし、犯人と一つ屋根の下に居ても、何かされそうになったら舌を噛みきって死ねばいいと考えている辺り、世捨て人のようだったが、一人で生きていく辛さを考えると、それは自然な思考かもしれないと思いました。乙一さんはもしかして、死にたくなった事があるのかもしれない。