横領などの知能犯罪を追う私は、父の背中を見て刑事になったが数字の手掛かりを探す為、日々電卓を叩いている。そんな私に所轄の管轄で起こった銀行立てこもり事件の現場指揮を一任される。戸惑う私に犯人からの指名だと言われ、何が何だか分からぬまま、現場へ向かう。
現場には私と犬猿の仲である後藤率いるSITと所轄刑事、そして、警察庁から吉田というキャリアが来た。どうして警察庁が絡んでくるのか困惑する私は、犯人とコンタクトを取ろうと銀行に電話するが、電話に出る気配はない。
刑事だった父と友人であったキャリアの野呂は、現場指揮など取った事がない彩香を心配し、現場へ急いでいたところ、上司と警察庁のキャリアに足止めを喰らう。
犯人と連絡がつかない事には何の手立てもないと考える私に吉田は、主犯は國井という元刑事だと教え、國井の連絡先を教える。別組織とは言え人質がいるのに犯人を隠した吉田に怒りを覚える一方、ただの銀行立てこもりではないのだと思い始める。
『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』
著者 梶永正史
発行元 株式会社宝島社
ISBN 978-4-8002-2031-8
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
“ブラッド・ユニット”通称、血塗れユニット。
昔からある噂で、法で裁けない罪人を独自に処理する謎の組織があるという。その構成員は現役警官や元警官が中心で、未解決事件に多く関わっていると。噂の域を出ないと思っていたブラッド・ユニットという単語が、立てこもり犯の口から出てきた事で、國井が新世界銀行が関わる不正な金の流れを掴み、それを上層部に揉み消された事をきっかけに警察をやめたと知り、ユニットが手を組んだのではないか…?
國井が吉田と食料の受け渡しをしている時、SATの狙撃者により國井は撃たれてしまう。SITにより銀行に居た人質は無事救出されたが、國井という犠牲者を出してしまった。更に國井の目的であった政治と金が絡んだ諸悪の根源は、罰せられる事なくいるのだ。
国井を乗せた救急車は何処の病院にも向かっていなかったと知り、國井と共に救急車に乗った吉田が危険だと思った私は、後藤と協力して吉田を追う。すると、吉田が向かったホテルの一室には、死んだはずの國井や2人の立てこもり犯、そして人質としてジャーナリストの丸山と共に最後まで解放されなかった美しい女性がいた。
ユニットとは噂の様な血生臭い組織ではなく、その時々で同じ目的を持つ人間が協力し、目的を成し遂げる組織の事であり、私の父が昔、そのユニットのメンバーをしていた時期があったのだという。うっすらとしかない記憶の中で一緒に遊んだ女の子こそ、美しい女性で当時父は彼女を守るというユニットの任務中だったのだとわかる。亡くなった父は、“本気で人と関わること”を教えようとしていたのだ。
「血の通ったコミュニケーションがすべてを変える」という事を、生きている内に伝える事が出来なかったから。
騙された事にすら気付かせないユニットの基本スタンス通り、私は父の思う通りに行動していたのだ。
途中、説明が長くて読むのが辛かったけれど、キャラクターがそれぞれ魅力的で良かった。
私が吉田の言動に振り回されているんだから、吉田の身なりや行動をもう少し違った言葉で表現してほしかった。私が惚れてしまうほど魅力的だと思わせたいわりに、何度も吉田を表す言葉が似たり寄ったりの言葉で、そんなに魅力的かな?と首を傾げたくなった。たぶん、作者は人を普段から褒めない人なんだと思う。褒める単語が少なすぎる。