40歳で身籠った信枝は、6ヶ月後に流産してしまう。楽しみにしていた子供を失った事で、子供を思わせる生き物を見たくもない信枝は、何度捨てても戻ってくる猫を、夫の進めもあり、飼うことにする。
母が拾ってきたくせに捨ててくるよう言われ、信枝を見て、猫を飼ってくれそうだと思い置いていったのだという、親に似て身勝手な小学生と、猫を通じて交流する夫妻。

やがて信枝が亡くなり、猫を看取った夫。
猫が来た事で流産した事がチャラになるわけでもないし、猫がいた十数年で、何かが変わったのかと言われれば、即答できない。しかし、猫と暮らした日々だけが、心にずっと残っていく。
救いは何もないが、日常を上手く切り取っている。

『猫鳴り』
著者 沼田まほかる
発行元 株式会社双葉社
ISBN 978-4-575-51378-3