澪のとろとろ茶碗蒸しが料理番付に載った事から、つる家の移転後も上手くいっていた。店が繁盛するにつれ、腰の悪い種市がお客さんの履物を出したりしまったりする様が、大変そうだと思う澪は、下足番を雇う事を進言する。かくしてつる家に両親を亡くし幼い弟と二人で生きていかねばならない奉公人・ふきを雇う。
新しいメニューを作ったが、つる家で提供する前に登龍楼で同じものがメニューとして並ぶという事が続く。ふきの仕業だと気付くが確証がないのと、奉公人がこのような大変な事をしでかすのは何かあるのではないかと考え、ふきに優しく接する。そんなつる家の面々の良心に触れたふきは、澪の料理の盗作を手伝う事は出来ぬと登龍楼に直談判するのだが…。
『花散らしの雨 みをつくし料理帖』
著者 高田郁
発行元 株式会社角川春樹事務所
ISBN 978-4-7584-3438-6
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでな以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
ふきを助ける為、登龍楼に乗り込んだ澪は、采女宗馬と対峙し、ふきを貰う。
吉原の料理人・又次がつる家にやって来る。そのやつれた様子や注文の品から、幼馴染みの野江ちゃんであるあさひ太夫が、病床に伏していると気付く澪は、遊女・菊乃を庇い右腕を斬られてしまったのだと聞く。
太夫の力になりたいと考える澪は、血を増やすものばかり考えていたが、澪やご寮さんが心を砕いた人から、野江ちゃんと昔食べた思い出のお菓子を貰い受け、澪は何とか太夫に食べさせようと吉原へ向かう。
何とか又次に渡す事が出来、又次は元気のない太夫に澪の姿を見せてやろうと考える。太夫の姿は見えなかったが、“涙はコンコン”という二人しか分からない合図を送りあう。
ご寮さんと共につる家を手伝ってくれているおりょうさんの息子・太一が麻疹になってしまい、つる家は人手が足らなくなる。それを知り、ふきを紹介した男の母を臨時の手伝いとして寄越す。
腰が曲がり見るからにご老人のりうさんだが、注文を間違える事も、汁物を間違える事もなく役立っていた。見た目もあり、りうを恐がっていたふきだったが、一緒に働くうちにりうから沢山の事を習い、打ち解けてきたが、太一やおりょうさんの麻疹も無事に治り、りうはお役御免となる。見送るつる家の面々にりうは、恋をまだ知らぬ澪を心配する。
「楽しい恋は女をうつけ者にし、重い恋は女に辛抱を教える。淡い恋は感性を育て、拙い恋は自分も周囲も傷付ける。恋ほど厄介なものはありゃしませんよ」
「けれどね、澪さん。恋はしておきなさい。どんな恋でも良いんです。あんたならどんな恋でもきっと、己の糧に出来ますよ」
澪に良くしてくれる医師を好いている美緒お嬢様は、嫉妬から澪を敵対視するが、澪の心は医師の気持ちに気付かず、小松原という料理人に向いていると知ると軟化し、逆に親しくなる。
医師の澪への気持ちに気付いている種市は、溜め息を一つつくのだった。