90人が共に暮らす児童養護施設・あしたの家は、今となっては珍しい、大所帯の施設だ。沢山の職員がいても、その分子供達もいるので、中々全員にまで目が配れない事も多い。そして、その多忙さとやるせなさから、いきなり辞めてしまう職員も多い。

営業マンだった三田村慎平は、テレビで観た児童養護施設のドキュメンタリーに感動し、転職してきた。普通の家庭で育った慎平は、子供は当然、甘えられる存在がいるものだと思っていた。だから余計に、親に捨てられ、なついていた施設の先生も寿退社の為去ってしまう…そんな状況を観て、“かわいそう”だと思っていたのだ。
施設でも特に問題のない子だった奏子に、どうして職員になったのか?と聞かれ、その事を正直に話した慎平は、施設に向けられる偏見の目を持つ人だと思われ、壁を作られてしまう。そんな奏子を見ていた久志は、「みんな自分が持ってるものを持ってない人がかわいそうに見えるんだよ。慎平ちゃんもきっと恵まれた人なんだろうね」
それでも久志は慎平が好きだと言う。
「だって、持ってない事を『何で持ってないの?』って訊かれる方が困るじゃん。慎平ちゃんみたいな人って、俺達みたいなのを見ると、自分が色んなものを持ってる事に引け目を感じちゃうんだと思うよ。自分が持ってるものに引け目を感じちゃう人って、気立てが優しいんだろうなぁって思うよ」

『明日の子供たち』
著者 有川浩
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 978-4-344-02614-8

以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。