ゴジラVSスペースゴジラを見て映像関係の仕事をめざした良助は、新卒の時に念願の映像関係の会社に内定したが、入社したらその会社は計画倒産していた。
新入社員も入社させるんだと周りに信じさせるため、保険関係も手続き済みだったので、なんとか他の会社に再就職しようとしても、過去の会社名がバレてご破算になることばかりだった。
腐ってバイトを食いつなぐ日々を送っていた良助に、ある日他の会社に内定したとフリーターの先輩から誘われたバイトは、映像関係の会社で…。
『イマジン?』
著者 有川ひろ
ISBN 978-4-344-03561-4
下働きを始めた会社で良助は七転八倒しながらも、それなりに可愛がられて混ざっていく。
バレたら辞めればいい。そう思っていた会社で上手くやっていけていると思ったその時、良助を映像関係の仕事に引っ張りこんだゴジラの映画を、社長が当時良助と同じ立場で関わっていたと聞く。
「本読んでてしおりがない時、ページを三角に折るじゃないですか。俺の人生のね、夢の折り目だったんです。でも、夢が叶わなかったら辛いじゃないですか。だから、今は観るのちょっと痛くって」
「人生に折り目つけてまで刻んどきたかったんだろ?ちょっと痛い程度か?勇んで強く折れば折るほど叶わなかったときは折り目は痛い。そういうもんだ。」
「痛いくらい折れないへなちょこより上等だ。それにきっちり折り目折ってる奴は信用出来る。折り目正しいっていうだろ」
「礼儀ってな、折々きっちり折り目を折ってきた人間に身につくもんだ」
ひとつの現場が終わってホッとした良助に、履歴書持ってこいと社長。計画倒産した会社の社員だったと正直に告げた良助に社長は、うちが一番迷惑被ったんだ。そのうちがお前を採ると言っているんだと告げて良助は号泣する。
理不尽な監督に、年功序列社会で出来すぎる助監督を庇ったり、この道に引っ張ってくれた先輩の恋を応援したり、良助は確実に成長していく。
不慮の事故で中止を余儀なくされそうになったところ、いつかの恩を返そうと、必死に動いてくれるひとがいる。
【救われた今日に尽くすことが、いつかの明日をまた救う。】
自分たちの仕事は、そういう仕事なのだ。
彼らの事がこうやって書かれるまで、ドラマや映画がどうやって出来るのか知らなかった。
空飛ぶ広報室や植物図鑑、図書館戦争など、有川浩のファンなら泣いて喜ぶシーンがたくさんあった。そして、映画化があんなに大変なこと。私たちは知らないことが多すぎると思った。
なぜ、この作品は有川ひろなのか。それもわかった。