共通の友人が事故で死んだ。
それは友人の彼女で、主人公・優が好きだった女。
彼女のメッセージは何だったのか?
優と霧島、そして霧島の彼女である七海は、彼女の死の真相を知ろうと各々立ち上がり…。
『雪の華』
著者 伊藤たかみ
発行者 株式会社角川春樹事務所
ISBN 4-7584-1039-9
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
高校生だった頃にクラブで知り合った京子は、人の心が見えている様な、不思議な事を言う子だった。
後に京子の彼氏となる霧島と友人の優は、三人で仲良くしているうちに、不器用で不確かな三角関係を生みだしていた。
決して普通の出会いとはいえなかった京子との出会いは、京子が仕組んだ集団レイプ事件で、それを事前に嗅ぎつけた霧島は、好きな人がそんな傷を負う事が耐えられず、無理やり優を引き連れて参加し、京子と一線を越える。
―――復讐のつもりだった。
京子は霧島と付き合い、ボロボロに弄んで捨ててやろうと思っていた。そうするだけに値するほど、霧島のした事は卑劣で、許しがたい事だったのだ。
しかし霧島と付き合ううちに、彼に惹かれていってしまう自分の心。霧島を好きになればなる程、霧島が持つもう一つの感情。
―――京子が憎いという感情が、好きと同じだけ自分に向けられている事が怖く、寂しくなった。
霧島との子供を妊娠した京子は、交通事故であっけなく死んだ。
遺された優と霧島は、京子が死に際に電話をかけたという七海に各々近づき、京子の最後の言葉を知ろうとする。
共感覚を持つ優と、恐らく持っていたのだろう京子のものは異なっていて、優は匂いから形が見えるだけだったのに対し、京子は複数の共感覚を持っていたらしく、それを複合する事で、人の心が見える様な感覚を持っていたと推測された。
三人で過ごすうちに、自分より優を好きなんじゃないかと考えた霧島が、必要以上に優へ京子を近づけた一方で、これだけ愛しているのに同じ愛をもらえず憎いと思ったり、共感覚なんかなくてもそれは人が持つ感情で、故に、霧島が京子の子供の父親が優なんじゃないかと考えたのもよくわかった。
人を愛するという事は、とても難しい。
七海に京子と同じ形が見えてしまったのも優の心で、七海が京子と同じ雰囲気を持つのも、七海の不安からで。
心理学的な知識など何もない私は、詳しい事も分からないけれど、人の心って、そういった不思議な、今の科学では解明できない様な力があると思いました。
人を愛する事は、難しい事なのだけれど、それでもやっぱり、京子や霧島や優・七海の様に、迷いながらも人を全力で愛してみたいと思いました。
京子が本当に電話をかけた相手は優だったのではないかという七海の予測が当たっていたわけだけれど、こんな風に死んだ人が調べてほしいと願ったところで、何人それを実行するだろうと考えると、そうしただけで霧島も優も、すごいと思ったと同時に、そういった人間関係を作れた京子はすごいなと思いました。