元彼から暴力を受け、男の人が怖くなってしまい、カウンセリングに通う麻由と、その麻由に気がある年上の蛍。
蛍を好きになるけれど、付き合わない事がわかっている麻由は複雑な心境で…。
『波打ち際の蛍』
著者 島本理生
発行者 株式会社角川グループパブリッシング
ISBN 978-4-04-873873-6
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
“彼を否定しようとすると、必然的に自分を正当化している自己嫌悪にいつもぶつかる。
断言する様な言い方が出来る程強くないくせに”
主人公の言葉にあぁ、分かるなって思いました。島本さんの本は、ふっと心の中を覗かれた様な気になる一文が結構あります。モヤモヤした時に話したら、解決はしないけど、少しだけ気持ちが軽くなる、同性への悩み相談みたいな感じなのですが、上手く表せていない様な…まぁ、雰囲気で察して下さい。苦笑
「生き続けてる人間にとって、気を済ませる以上の解決なんてないと、俺は思うよ」
“貴方と居ると、車も、風も心臓も何もかも波の音みたい”
「許容したり寛大になれない事が沢山あって、でも貴方はいつだって大人で、その差がどうやったら埋まるのか分からなくて、ずっと考えてて」
これって、主人公は実際に一回りも年上の人を相手にしてるから出た言葉みたいに書いてあるけど、同い年や、時には年下の人にだってそんな事を感じる私は、幼いって事なんだろうか?
“どうか自分の正しい価値を知り、自分自身に忠実であって下さい。
結局、俺達が帰る事の出来る場所は、そこにしかないのだから”
蛍や麻由、従兄弟のさとる…この物語に出てくる人は皆が優しくて、弱ってしまった麻由に対して、人として優しく取り繕える部分だけを相手に提供している様な、ガラスの置物みたいな不安定さが溢れてくる物語に思えました。
優しさだけを提供しようと心掛けるのも初めは自分でした事だけれど、それを続けていくのは凄く辛い事だと思うから、何だか自分で自分を傷付けている様で、読んでいて痛々しかったです。