「二階扉をつけてください」
二階扉なるものを付ける事が政策で決まったらしく、何に使うのかも解らないまま二階扉を付けると、付けたばかりの二階扉に何かがぶつかる音がの後、赤ん坊の泣き声がした。
回覧板にかかれた注意。
二階扉には鍵を掛けない。そうしないと外から中へ入ってこれないので。
出産の為に実家に帰った奥さんが気になり始める。
回覧板はちゃんと読まないと…。
ホラー系短編集。
『バスジャック』
著者 三崎亜記
発行者 株式会社集英社
ISBN 4-08-774786-7
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
「しあわせな光」
暖かな人の家の光を双眼鏡で覗くと、両親の若い頃が見え、それを楽しんで覗いていた彼は、ある日、母ではない、自分の知らない女性を見る。そしてその家に帰ってきたのは、少し歳をとった自分の姿で娘が出迎えている。
今日出逢ったばかりの女性との未来を見せてくれた双眼鏡は、彼の家の窓から暖かな光を街に投げ掛けるようになるのもそれほど先じゃないと教えてくれたのだった。
「二人の記憶」
彼女が覚えている思い出を彼は全く覚えていないどころか、経験したこともないと感じる。二人で築いてきたささやかな歴史を、彼にとってはどんな出鱈目な出来事を投げ掛けても、彼女は的確に、懐かしげに、優しく投げ返してくる。そしてその歴史は、次に会った時にはすっかり模様が変わり、新たな史実が紡ぎ出されるのだ。
全く別の歴史が刻まれる事を覚悟の上で、彼は彼女と結婚するのだった。
「バスジャック」
バスジャックがブームになり、正しいバスジャックの仕方が横行する世界。
「雨降る夜に」
図書館と勘違いしている女性と、それに付き合い、部屋と本を提供する男性。
「動物園」
動物を召喚できる女はそれを仕事にしている。対立する会社があって…本の見世物をやる話と同じです。
「送りの夏」
“誰かを「失う」と言うことは、「アルバムが最後まで埋まらない」事なのだ、と。”
「死」について考えるのに、水族館という発想は無かったなぁ。
“分厚いガラスに隔てられ、決して手を伸ばす事が出来ない。
死と人を隔てる透明な壁の厚みは、茫として知れなかった。”