結婚するけど君が好きだと言う彼は、所謂DV男と付き合い、自傷行為をする主人公に、このままでは駄目だと進言する。
“家族と恋人、どちらか一方を切り捨てた時点でもう一方へ呑まれる事も悟っていた。だからどちらとの解決も逃亡も放棄する事で、ある意味、バランスを取っていたのだと思う。”
小さな頃から思い描いていた様な愛情を向けられなかった彼女が、不倫の末、DV男と別れるに至るまで。
『あられもない祈り』
著者 島本理生
発行者 株式会社河出書房新社
ISBN 978-4-309-01981-9
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
「皆、自分の事なんて分からなくて、人の事ばかりよく見える。
だから人と関わるんだろう。
教えたり、教えられたりする為に」
前向きで、リアリストな彼と居ると落ち着かなくて、精神的にも肉体的にも自分を傷付けてくる彼氏と居ると楽だ。
それは傷つけられる事で、いつか私を殺してくれると思ったから。
実家からの仕送りの催促、人と身体を合わせても苦痛しかない自分。
“いつだって自分だけが悪いのだと思っていた。そうすれば何も見ずに何とも戦わずに思考停止していられた。”
“全部自分が悪いだなんて、全部自分が悪くないと言ってるのと同じ事だ”
やがて彼女は、彼の弱い部分を初めて目にする。
“あの人は弱い分だけ強情で、強い分だけ脆かったのだ”
“一度でいいから何も奪われずに底無しに愛されたかった。でも、他人と比較するから実態が捉えられないだけで、実際にこの世に底無しに甘やかされて育った人間なんていない。
もしそういう人が居たとしても、それが幸福な事とは寧ろ言い切れない。
それも分かった上で捨てられない幻想を大切に抱いてたくせに、その感情を口に出す事すら出来なかった。”
“子供のように泣きながら、あなたに素直に言えばよかった”
好き同士なのにタイミングが合わないって、なんて切ないんだろうって思いました。
全部自分が悪いだなんて、全部自分が悪くないと言ってるのと同じ事。確かにそうだなと感心しました。