Silhouette of wonderland

新歓で見せた本格的な爆発のお陰で、新入生は元山・池谷を含めて九名となった。
朴念仁と友人らに呼ばれている大神副部長は、近くのお嬢様系女子大の大学祭に行き、些細な事から彼女を作るが、行き違いがあり失恋し、上野が一回生を招集し、大神が潰れるまで呑ませ、思う存分吐かせた。

大学祭で毎年恒例のラーメン屋を出店する事になった【機研】は、ＰＣ研と呼ばれるエロゲーを作って売っているサークルに嫌がらせの為、向かえで同じラーメン屋を出すという暴挙に出た。
そこで店長を任された喫茶店の息子・元山は、ラーメンの味を本格化させ、元手３０万を３倍にすると言う上野の目標を後押しする。学祭に招かれたアイドルにラーメンを出前した池谷の策により、「らぁめんキケン」は、アイドルの触れ込みで更なる売上を記録した。
しかし、ＰＣ研に拐われた元山と出前用の自転車一台にキレた上野は、バイクで乗り込んだが、元山は多勢に一歩も引かず立ち向かっていた。成し遂げた事の無かった最終日の完売を持ち前のトークとアイデアで成し遂げた一回生九名に、上野と大神も度胸を抜いた。

バイクで派手にＰＣ研を追い回し元山を助けた事が影響し、教授に呼ばれた上野は、ロボット相撲大会に機研を出場させろと言われる。低予算でロボットを作れないと判断し、昔作ったキケン号を改造する事にした。
操縦はどんな状況だろうと肝が座っていておたつかない池谷。しかし決勝で間接をやられたキケン号改めさとるくん号は、「勝たんでも負けん」という上野が掲げた目標通り、自爆により引き分けた。

全員が進級した機研は、七名の新入部員を迎えた。暇潰しで元山が作った小さな空気砲が引き金となり、一回生ＶＳ二回生の対決が始まった。やがて手を組み、かなり本格的な銃を作っていた時、元山はハタと気付く。

「いいか。俺達が今作ろうとしてるのは、銃だ。銃を密造するのは犯罪だ」

目が覚めた一・二回生が銃を分解していると、上野がロフトから顔を出し、ゲラゲラと笑い出した。
一回生の時、自分がＰＣ研との闘いの際に作った銃を見て、大神は上野に原型をとどめないほど分解させ、その後説教をされたという。

「あいつ容赦なく厳しいぞ、そーゆーとこ」
上野の言葉を肝に銘じつつ、機研は数日後、何気なく空気砲戦争について聞かれて分解処分したと言うと、「それならいい」とこの世で最も怖い締めの言葉が後輩を震え上がらせた事は言うまでもない。

“相手に染まったり引きずられる事がない”大神。
卒業してからは毎年、学祭の日取りを調べてはいたものの、いつの頃からかめっきり腰が上がらなくなった。

“…ああ、そうか。
まるで昨日の事のように鮮明に思い出せるあの頃。なぞって話すだけでもこんなに楽しいのに――――もうあの場所は俺達の場所じゃないんだ。”

“学祭に行ってももう自分は客にしかなれない。それを認めるのが嫌だったのだ。
俺達は【機研】だ。【機研】は俺達のものだ。
―――もう違うと認めたくなくて。”

“俺達は【機研】だった。【機研】は俺達のものだった。
―――でも、俺の『今』はここにある。俺の思い出話を楽しそうに聞いてくれる彼女が横に居る。それが『今』だ。
だからあの楽しい場所は、楽しい時間は、現役に譲り渡さなくてはならないのだ。”



“【機研】だった時代は消えない。なくならない。思い出せばいつもそこにある。それはなくなったのではなく、宝物になった。”

“全力無意味、全力無謀、全力本気。
――一体あんな時代を人生の中でどれ程過ごせるだろう？”


後書きにて。“男子というイキモノは独特の世界を持っていると思います。男子しか共有出来ないその世界は、女子から見るととてもキラキラしていて、自分もあの中に混ざりたいなあといつも思います。
でも、その世界は女子が一人でも居合わせると「本来の姿」ではなくなるのです。
どうやら老いも若きも全ての男子は自分の【機研】を持っています。”


相変わらずの有川ワールドで、とても楽しかったです。丁度、主人公達が大学生で、想像もしやすかったり。笑