強制的に有給を消化させられた針谷と尾形、入院中の木戸、そしてSROの者は息を殺すように過ごす事を強いられていた。FBIのような組織を目指して立てられたSROだったが、警察はまだまだ自分の島を荒らされるのを嫌う縦社会。ドクターを逮捕したきり、何の協力要請もないSROには、市民からの投書ばかりが寄せられており、少しずつそれを読むという当面の仕事が割り当てられていた。
投書より、下野東方病院で勤めていた看護師が、担当患者が亡くなった責任をとらされクビになったと書いてきた。どうしてほしいのか、何があったのか、詳しいことは何も書かれていない投書に興味を持ったSROは、看護協会に掛け合っても駄目だったという文章に着目し、看護協会へ向かう。
新米看護師を沢山雇い、育つ頃には肩たたきをすることで人件費を節約できているという下野東方病院では、通常よりも多くミスが起こっているだろうと看護協会の女性は話す。
投書してきた本人・浜田は、SROの誰かが病原菌を移した可能性はないかとの問いに、死の天使の事かと聞くのだった。
『SRO U 死の天使』
著者 富樫倫太郎
発行所 中央公論新社
ISBN 978-4-12-205427-1
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
キリスト教信者の琥珀医師は、神に代わって重病で死にたがった患者を殺していたのだ。
SROは死の天使の事が気になるが、謹慎中なこともあり、思うように捜査が出来ない。そんな中、看護協会の女性が下野東方病院へ入院し、潜入捜査をすると聞いた室長は、富田に入院してもらうことを思い付く。
琥珀医師が狙っていた患者を担当看護師が説得し、治療を受けるように気持ちを変えてしまったのを良く思わない琥珀医師は、担当看護師を辞めさせる。元恋人の看護部長は琥珀医師の部屋を訪れ、担当看護師を辞めさせないように説得する途中、イエス・キリストの像が飾られた不気味な部屋を見つけてしまう。
看護部長をあしらった琥珀医師は、いつものように教会で自らの罪を懺悔していた。神父に患者を殺していることを話した琥珀医師は、神父から自首を勧められ、雀蜂の毒を使い神父を殺した。
下野東方病院のカルテをハッキングした麗子は、医学部卒の夏目にカルテを見せ、次に誰が死の天使に狙われるか調べる。琥珀医師が犯人ではないかとふんだSROは、琥珀医師をつつくが、令状を持ってこいと正論を言われてしまい、謹慎中のSROは手も足も出ない。
室長はとうとう、履歴が残る前提で、厳重に管理された死亡者のカルテを麗子にハッキングさせる。そのことを知った琥珀医師は、それを警察に訴えたことでSROは部屋さえ取り上げられ、資料室で缶詰になれと追いやられる。
看護協会の女性は、手術中に琥珀医師の手で亡くなり、看護部長は真実に近付いたので薬を打たれて監禁される。そして入院中の富田も薬を打たれて身体の自由を奪われ、日付が変わったら殺されてしまうというのだ。
年に24日、毎年必ず患者が殺されている目を見つけたSROは、歴代ローマ教皇の命日だと気付き、明日も命日と知り、富田が殺されると予測するが、不正にハッキングした証拠からでは令状が取れない為、動けない。そこで室長は自分の首をかけ上に掛け合う。任意同行を求め、何としても証拠を掴めと言う上層部に、走り出すSRO。
富田を助け出すが、琥珀医師は病院の屋上から転落死してしまうのだった。
勢いがあって面白い。続けて読みたい小説です。