地域の広報紙に何気なく目を通して知った、となり町との戦争。
一体、何が始まるのか?
となり町と戦争して何の意味があるのか?
次第に巻き込まれていく北原目線の、静かなとなり町戦争。
『となり町戦争』
著者 三崎亜記
発行者 株式会社集英社
ISBN 4ー08ー774740ー9
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
北原修路はある日突然始まった、隣町との戦争で偵察業務をする様任命されてしまう。
一般的にイメージする血を見る様な戦争が起こっている気配はどちらの町にもなく、地元の広報紙で戦死者の人数が小さく載っている程度であったが、北原の偵察は町役場のとなり町戦争係に勤務している香西という女性から偵察を続ける様に電話が来るまま、勤務先の会社への通路である隣町へ車で通る際にキョロキョロと辺りを見回し、気付いた事を報告するのであった。
やがて偵察の次段階として敵対する隣町へ、香西と結婚したというていで移り住む事となり、北原は香西と二人でマンションに暮らし始める。
香西の元にかかって来た電話で、香西の弟が自ら志願して戦争に参加する事を知り、やっと戦争が実際に起こっているという実感を持つ位、北原は偵察を続けていても、戦争が起こっているなどという実感がなかったのだ。
隣町に潜入している事がバレ、北原は香西の指示通りに重要なファイルを片手に自分の街へ戻ろうとする。
「人はやっぱり、自然に生まれて、自然に消えていくのかも知れないね。
それだったら、こうして戦争で人が死んでいく事に、僕は何も感じなくていいのにね。だってそれは、死んでいくんじゃなくって、消えていくんだからね」
誰かの死を無自覚に、イノセンスに、生涯を終えたかもしれない北原が、となり町戦争に参加した事により感じた事。
それは僕達は自覚の無いままに回り回って誰かの血の上に安住し、誰かの死の上に地歩を築いているという、日常の事だった。
北原と香西さんは互いに惹かれあってはいたが、香西さんは望まない結婚をする。
それは今の時代にリメイクされた戦争って感じで、戦争を二度と企てない様にする為、王の娘を人質として嫁に出すみたいだなと思いました。そういった意味なら香西さんは今日の戦争で勝ち負けはないと言っていたけれど、負けに当たるのかも知れないとも思いました。
これは想像でしかないけれど、香西さんは北原に、負けたから自分が隣町の町長の息子の家へ嫁ぐ事を知らせたくなかったのかな…なんて思ったりもしました。
面白い題材ではありましたが、北原と香西さんがどちらも現実離れした幼さと大人ぶったところがあって、一過性の本でした。