ご寮さんにご執心の老人がおり、あまりのしつこさにつる家の面々も困っていた。するとその老人はご寮さんを後添えにと思ってくれており、澪はご寮さん自身の幸せを考えてこなかった事にハッとする。

生麩を作ろうと思い、他店からやり方を聞き作った澪は、その心こそが、料理人には向かないと怒られてしまう。
佐兵衛を知る者から、料理人としての教持を言われ、やっと聞けた佐兵衛の話に涙するご寮さん。

「人は与えられた器より大きくなる事は難しい。あなたがつる家の料理人でいる限り、あなたの料理はそこまでだ」

かつて澪に、吉原で店を出さないか?と持ち掛けてきた男がまたつる家に来る。店の名前も天満一兆庵にすると良いと言ってくれた男に、そんな話事態、初耳の種市やご寮さんは動揺する。

つる家に付け火をした登龍楼より、格安でしかもふきの弟もつけて、店を譲ると言われ、種市の為につる家を続ける事、ご寮さんの為に天満一兆庵を再建する事…考えが纏まらない澪だったが、種市もご寮さんも、何より澪の為にはどうするべきかと考えてくれていた。結局澪は、つる家を現在の場所で続ける事を選択した。

そして吉原で、野江ちゃんと襖越しの対面を果たす。

“土の上に生るものはお湯から、土の下に出来るものは水から茹でる”
料理を習いに来た早帆に下拵えを教えつつ、火事が多発した事で火を使える時間が街で限られ、お弁当を出した澪は時間があり、早帆の真面目な人柄に惹かれ小松原の事を話す。すると早帆は小松原の妹であり、小松原の事を想っている澪を尋ねて来ていたのだと話す。
かつて小松原の母の為に実を食べられるようにした澪を、小松原の母と対面し、身分の違いを何とかするため、二年間武家で修行し嫁に来いと言ってくださるが、あまりに突然の事に、その場から逃げ出してしまう澪。
早帆は諦めずつる家に使いを寄越し、そして小松原自身からも嫁にしたいと言われ、準備を進める澪。しかしそれは、料理人としての道も、野江を救う道も、諦める事だった。

『心星ひとつ みをつくし料理帖』
著者 高田郁
発行元 株式会社角川春樹事務所
ISBN 978-4-7584-3584-0