勉強もろくにせず、怠惰な生活を送る大学3年の主人公は、とあるサークルに入る。
何度も大学生活をやり直すのに、そこで出会う人間は変わらないのだ。
『四畳半神話大系』
著者
森見登美彦
発行者 株式会社太田出版
ISBN 4-87233-906-1
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
映画サークル「みそぎ」に入った主人公は、同じサークルで出会った偏屈な小津と共に、大学院生になってまでサークルに居座り続け、実権を握る城之崎先輩を引き摺り下ろそうと模索するのだが、返り討ちに合う。
サークル追放になった小津と、追放ではないが断絶状態におかれている主人公は、みそぎの新入生歓迎コンパで打ち上げ花火を城之崎先輩他、サークルの人間に放つが、呆気なく説教と打ち上げ花火を背中に逃げ出すと言う醜態を晒すだけであった。
主人公と同じアパートに住む一応大学生らしい樋口師匠は、小津の悪巧みに片棒を担ぎ、主人公に偶然を装い遭遇し、自分を「かもたけつぬのかみ」という神様だと言う。
まんまと騙された主人公は、自分か小津かどちらかと明石さんの縁を結ぶのだが、どちらが良いかと問い主人公をからかって遊ぶ。
次に四畳半でタイムスリップした主人公は、“弟子求ム”というビラを見て訪ねた樋口師匠の元で小津や明石さんと共に、師匠の弟子という時間を過ごす。
更にタイムスリップしソフトボールサークル「ほんわか」に入る主人公は、そこでも小津達と出会い、最後にタイムスリップし入った秘密組織「福猫飯店」でもやはり、小津達と出会う。
いずれの人生でも主人公は小津に出会い、羽貫さんに飲みに誘われ、後輩に明石さんが居て、樋口師匠にいいように使われる。
「慰める訳じゃないけど、あなたはどんな道を選んでも僕に会っていたと思う。直感的に分かります。それでいずれにしても、僕は全力を尽くしてあなたを駄目にしちゃうからね。運命に抗ってもしょうがないでしょう」
「我々は運命の黒い糸で結ばれてるという訳です」
まさに小津の言葉通りだった。
“冷静に考えればすぐにでも出る結論であり、今まで気づかなかった己が不明を恥じた”
四畳半で生活するとタイムスリップすると分かった主人公は、タイムスリップをし続け、人類最後の人間になった。
“しかし私は気がついた。
ほんの些細な決断の違いで私の運命は変わる。日々私は無数の決断を繰り返すのだから無数の異なる運命が生まれることになるだろう。したがって、この四畳半世界に、原理的に果てはないのだと。”
“人類最後の一人に、果たして生まれている意味があるのか”
“語り合える相手は居ない。世界が失踪したのであろうと、私が失踪したのであろうと、今私にとって存在しているのは世界中に私だけである”
やがてタイムスリップを止め、引っ越しをした主人公は、秘密組織で設けた金で小津を旅行に行かせ、しばしの隠れ場所を提供した主人公。怪しむ小津に主人公は、どの時代でも小津が主人公に送った言葉を投げ掛けるのだった。
“私はにやりと笑みを浮かべた。
「俺なりの愛だ」
「そんな汚いもん、いりません」
彼は答えた。”
走れメロスで出てきた図書館警察が秘密組織「福猫飯店」の一組織だったのが驚きでした。読んだ時期もたまたま近くて、タイムリーでしたね。笑
主人公をはじめとする登場人物が、いい感じに胡散臭くてめんどくさく、面白かったです。