舞踏家の父を持つ朔は、小学六年生。父の舞台を見に行った先で、佐倉誠吾と会う。
舞踏に人生を捧げる父に嫌気が差した母が家を出ていってしまってから、朔の存在理由は父が生きていてこそだと思い込み…。
『あなたの呼吸が止まるまで』
著者 島本理生
発行者 株式会社新潮社
ISBN 978-4-10-302032-5
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
“ラジオは電波の向こうで確かに人が生きて呼吸しているのを感じるから”好きだと言う朔は寂しがり屋だが、父はその朔の思いに気づけない。
母が出ていき“大人だって、してみないと分からない事はあると思った”朔は、早熟な部分と子供の部分を持ち不安定だった。
そこに漬け込むように朔に悪戯をした佐倉を、父は「佐倉の様な良い兄が居たら」等と言う。
違うのに、佐倉は良い兄でも良い人間でも無いのに。
“そう、私は確かにまだ子供です。
だけど子供だからなんの責任もないと言われるのは、子供のうちは責任がなくても寄りかかる不幸を諦めろと言うのと同じ事じゃないだろうか”
朔は佐倉にされた事を父に言えなかった。しかし、小説家志望の朔はなけなしの勇気を振り絞り、この事を大人になったら佐倉だと分かるように小説に書くと電話で宣言するのだった。
後味の悪い話でした。島本さんの作品では珍しく、読んだ後に頭の中に靄がかかった様な後味がなかったので、ちょっとガッカリしました。結構、あの感覚は好きだったりするので。苦笑