カフェでアルバイトをする大学生の古幡慎一は、高校生の頃に担任だった斎藤夏姫先生が初めてカフェに来たとき、話しかけるタイミングを逃した。
突然学校を辞めた夏姫さんは、カフェでいつも男を待っていた。男と目立つ別れ方をした夏姫さんに話しかけた事で、二人の距離は近づくが…。
天使の卵を読んだ後に読むのがオススメです。
『天使の梯子』
著者
村山由佳
発行者 株式会社集英社
ISBN 4-08-781319-3
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
カフェで一度だけ見た、作業着姿の男。夏姫さんの過去を知りたいが、語ろうとしない夏姫。、慎一は自分が両親に捨てられ祖父母に育てられた事、その祖父が亡くなり、今は祖母と二人暮らしの自分の方が大変なのではないかと感じる。
“夏姫さんの弱さの源が、メールの向こうにいる誰かの存在であることは想像がついた。
そうして、そんな夏姫さんを問い詰められない事こそが、俺の弱さだった。”
八歳の差をこんな感じだったのかなと呟いた夏姫さんの過去に、慎一は触れたくても我慢する。恋人としての位置も貰えているのかハッキリしないままでいるのは、慎一が怖がりだからだ。
“初めから期待をしなければ、失望もしなくて済むのだ。身の程を忘れて欲張ると、ろくなことはない。下手をしたら、せっかく手に入れたものまで根こそぎ失う事になるかもしれない”
歩太が描いている壁の絵を見に行った慎一は、ひょんなことから歩太と会話し、飲みに行く。
「もう二度と、置いていかれたくはないんだ」
という歩太に小さな嫉妬心から、歩太のクロッキー帳を見てしまう。それは紛れもなく夏姫さんだった。
「想い出ってさ、時がたつと美化されるものだっていうだろ。もしかして、彼女が一人きりの特別な女性だったように思えるのもそういうことなんだろうかって、俺なりに何べんも考えたんだけどさ。結局、答えなんか出なかったな」
歩太に春妃の話を聞いた慎一は、歩太に背中を押される。
春妃さんにとらわれている二人が、春妃さんを捕らえていた。
再出発を夏姫は慎一と、歩太も一人で始める。
“僕たちは、ここから始まる。”
内容としては天使の卵続編なんですが、天使の卵があまりにも劇的すぎて苦手だった私は、こっちの方が好きでした。
文中で歩太の社長が、“人がいい”んじゃなく“いい人”になりたいと言っていたのですが、同じ人を見て、「いい人だから」と言った私と、「アイツはいい人なんじゃなくて、人がいいんだ」と言った部活の先輩の会話が思い出されました。
天使の卵で出てきた西行の詩、桜を下から仰いで死にたいってやつですが、歩太が犬のフクスケを埋める時に桜が満開だったと言っていたのも良かった。歩太と春妃は春に出会って春に別れたんですね。なんか感慨深かったです。