短編集です。
テンチョウ
『天頂より少し下って』
著者 川上弘美
発行者 株式会社小学舘
ISBN 978-4-09-386304-9
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
「一実ちゃんのこと」
妻を溺愛した夫と、妻の父が造り出した、妻のクローン1号である一実ちゃんは、同じくクローンである二実と三実と四人家族。
好みも生活スタイルも亡くなった母にそっくりだが、性格は違うらしく、一実は自称なげやり派だ。
クローンといっても普通の人間と何ら変わらないし、一実の母に会ったこともない私は、特に違和感もなく交友関係を続けている。
「ユモレスク」
他界した父の再婚相手である、義理の母と二人で暮らしているハナは、男気のある母が大好きだ。
何かに疲れた母が旅先から帰ってくるのを、今か今かと待っているのだった。
「金と銀」
絵描きの再従兄弟と瑛子
「エイコちゃんのしっぽ」
しっぽ=尾てい骨の出っ張り
派遣会社で働くエイコちゃんは、しっぽがはえている。
小さくて、骨にも思えるしっぽは何だか愛らしい
「壁を登る」
母は変な癖があって、知らない人を家に泊める。
しっかりもてなし、料金を請求する母が連れてきたのは、珍しく若い男の人だった。
家の修理を手伝ったり、買い出しをしたり、甲斐甲斐しく働く彼は、壁を何も使わず登る癖があり、変な癖を持つ母と気が合いそうだった。
母を好きだと言う彼を、母は受け入れず、また二人暮らしが始まった。
「夜のドライブ」
友達に達観してきたのかもしれないと言うと、「達観じゃないでしょ。単に年取って、ガミガミ言うエネルギーがなくなってきただけでしょ」と言われてしまう。
友達は時々鋭い。
「天頂より少し下って」
息子と二人暮らしている。
川上弘美さんの作品と言えば、「センセイの鞄」や、国語の教科書に載っていた「水に浮かぶ桜」が有名ですが、本人も国語の先生であるためか、国語の教科書みたいな作品が多いです。
特に短編集はあっさり読めるので、初心者には入りやすい一方で、好みがはっきり分かれるところです。
発想は良いのにどうも活かしきれてないような…心理描写が甘いのかな。