有頂天家族、二巻目。

“面白く生きる他に何もすべき事はない。まずはそう決めつけてみれば如何であろうか。”

父は素晴らしく化けるのが上手かったが、ちょっとしたヘマをし弁天により狸鍋にされ亡くなってしまった。父に影響されたのか、親譲りの“阿呆の血”で天狗の様に人間に化ける私は、父を喰われ、自分も狙われているというのに初恋の人・弁天の手紙を待ち続けている。

かつて人間の少女であった弁天の能力を見出だし、自らの愛弟子にした天狗・赤玉先生をも手玉に取り、自由気ままに行動する弁天は、世界旅行をしているらしい。
そんな腑抜けた赤玉先生の元に、喧嘩別れをしていた弟子である二代目が帰ってくるなり、赤玉先生に勝負を挑む。弁天さえいれば二代目にも勝てたであろう赤玉先生は、負けてはいないと主張するものの、二代目との能力の差は、歴然だった。

一方、狸の長男は狸鍋にされてしまった父も得意としていた将棋を通じて恋をする。私は長男の恋を応援したいと奔走し、とうとう長男は父の偽右衛門に襲名でき、結婚をする。

そんな中、村には地獄絵から抜け出してきたという男が住み着き、村の住人をからかって遊ぶ。何とかせねばと本人に会いに行った私は、男は弁天を恐れていると知り、弁天の帰郷を願う。

赤玉先生と二代目の不毛な戦いの最中、世界旅行に旅立ったはずの弁天が帰ってきた。大喜びする赤玉先生と、弁天を憎き相手だと言い放つ二代目。
赤玉先生の継承者としてどちらが次の天狗となるのか、弁天と二代目は対決をし、なんと弁天は負けてしまう。スマートな物言いに腸煮えくり返る弁天。しかし結局、二代目は赤玉先生に敗北し、悔しかったら強くなれと言われてしまう。

次男が、旅に出たいと言い出し、私は反対するが母や長男の応援もあり、次男は旅立つ。そして私にも立ち消えになっていた結婚話が、許婚が再来する事により浮上する。が、こちらはまだまだ一悶着ありそうである。
一巻や二巻冒頭では、相変わらず向かうところ敵無しの弁天様最強という感じでしたが、二代目に負けてしまったり、弱った弁天を励ます日が来るとは…。
弁天に必要なのは狸の自分ではダメなのだと自覚するところはホロリときました。好きな人だからこそずっと見ていて、自分じゃない他の人が必要なのだと分かったとしても、それを自分の中で納得させるのは辛いことだよなぁと。
三巻も楽しみです。

『有頂天家族 二代目の帰朝』
著者 森見登美彦
発行元 株式会社幻冬舎
ISBN 978-4-344-02727-5